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2023.06.12.

まっちゃん部長日記 part9

松瀬部長のコラム「まっちゃん部長日記」part9を更新しました。

ぜひご覧ください。

 

『春の陣、復活めざす日体大の収穫と課題とは』

《スポナビより転載》

◆収穫は「フォワードのこだわり」

 

 雨のち晴レルヤである。再生をめざすラグビーの関東大学対抗戦Bリーグ(2部)の日体大が、同リーグ戦Aリーグ(1部)の大東大に19-63で大敗した。でも、持ち味は出した。ゲームキャプテンを務めた3年生SHの伏見永城は言った。透明のビニール傘の下で。

 「収穫は、フォワードのこだわりです」

 11日の日曜日。埼玉県東松山市岩殿の大東大ラグビーグラウンド。激しい雨が人工芝を濡らしていた。観客が200人(公式記録)。大東大のファンがメインだが、九州から日帰りで駆け付けた日体大選手の父親の姿もあった。

 日体大は、主将の伊藤拓哉ら約20人が教育実習で不在だった。メンバーが代わっていたこともあっただろう、組織ディフェンスがうまく機能しなかった。大東大のトンガ出身の強力な両センターに再三、大幅ゲインを許した。結局、9トライを献上した。

 

 ◆課題は「前に出る組織ディフェンス」

 

 日体大の秋廣秀一監督は前年度まで、大東大のヘッドコーチを務めていた。その古巣に完敗。「悔しいですね」と言葉に実感をこめる。

 「ディフェンスのところで受けに回ってしまった。課題としては、メンバーが代わっても、ディフェンスではみんなで前に出てしっかり止めることです」

 この日のテーマのひとつがディフェンスだった。とくにワイドブレイクダウン。ワイドに展開したポイントでターンオーバー(攻守交代)を狙う。前の青学大戦で9本を記録したそれは、この日、2、3本に終わった。受け身になる分、二人目の寄りが遅れた。

 

 ◆スクラムでは圧倒

 

もっとも、春の強化ポイントのひとつであるスクラムでは大東大を圧倒した。スクラムは「起点」であり、ラグビーの「基点」でもある。

白いヘッドバンドの左プロップ、築城峻汰、青色ヘッドキャップのフッカー、萩原一平、白色ヘッドキャップの右プロップ、久次米洸のフロントロー陣がそろってヒット。うしろのロック陣、ナンバー8の押しも前にのって、プロップの背筋が伸びる。両フランカーのくさびも効いて、押しを効果的に前に伝えた。

 スクラムをうまくコントロールしたフッカーの萩原は「今日はしっかり押せていました」と言葉に充実感を漂わせた。おおきな背中が少し揺れる。眉間の傷跡もしぶい。

 「まだまだ、です。まだまだ、チームとしてよくなれます。押している時にまだ、頭が上がったりしているので、そこを低く我慢すれば、もっと推進力が増すと思うんです。スクラムは(日体大の)武器になります」

 この日、マイボールスクラムでは6本も相手のコラプシング(故意に崩す反則)を誘った。前半の終了直前。スクラムでコラプシングを奪い、敵陣ゴール前のラインアウトの好機をつかんだ。攻めて、またスクラム。また連続攻撃。最後は、ラックの右サイドをフッカー萩原がついて、トライを返した。

 さらには後半中盤。スクラムで相手コラプシングのPKをもぎとり、タッチに蹴り出して敵陣ゴール前のラインアウト。ロックの岸佑融がナイスキャッチし、ドライビングモールをゴリゴリ押し込んで、フッカー萩原が左中間にトライを重ねた。その4分後も、PKからのラインアウトモールを押し込んで、今度はモールに加勢したCTB齋藤弘毅が右中間に押さえた。

 日体大は結局、3トライ。スクラムでペナルティーを得てタッチキック、ラインアウトからのモールでトライという武器ができつつある。攻守に活躍したロックの岸は少し笑みを浮かべ、こう言った。朴とつとした口調で。

 「スクラム、モール、いい感じです。ラインアウトも。自信をつかみました」

 

 ◆秋廣監督「50点」

 

 これで日体大は、関東大学春季交流大会Cグループを1勝4敗で終えた(優勝は大東大)。快勝、大敗、苦杯、惜敗、そして完敗。勝敗やスコアはともかく、随所に成長の跡はみえる。

 春の強化テーマは、スクラムとラインアウトのセットプレー、モール、そして前に出て止める組織ディフェンスである。春シーズンはまだ続くのだが、現時点の評価を聞けば、秋廣監督は手厳しかった。

 「100点満点としたら、50点ですか」

 でも、その表情は意外と明るい。“雨のち晴レルヤ”のごとく。もちろん、チームの成長に手応えを感じているからである。

(松瀬学=スポナビから転載)

 


萩原突進
ゲームキャプテンを務めた3年生SHの伏見永城

雨の中のあいさつ
(添付写真はすべて森屋朋子さん撮影)
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