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2023.07.03.

まっちゃん部長日記 part11

松瀬部長のコラム「まっちゃん部長日記」part11を更新しました。

ぜひご覧ください。

 

まっちゃん部長日記⑪

『悔しい敗戦を成長の糧に。収穫はセットプレーとディフェンス~日体大対早大C・D戦』

 

 ◆日体大対早大、プライドの激突

 

 朝からココロがざわついていました。1年の折り返しの7月1日。夏の足音が近づいてきたからではありません。僕が部長をつとめる日体大が、母校の早大と練習試合をするからです。ともに下級生主体のチーム編成とはいえ、プライドをかけた「チャレンジ」のぶつかり合いとなりました。未来につながる激闘でした。

 早大の本拠、東京・上井草の早大グラウンドです。雨上がりの天然芝がきれいに整備されていました。一応、「C&D戦」という立てつけでしたが、両チームとも相手に挑みかかる気概にあふれていました。

早大のCチームは先週、大学王者の帝京大を下した充実布陣です。加えて、(レギュラーの)アカクロジャージをめざす成長株ばかりでした。試合前、早大・佐々木隆道ヘッドコーチと言葉を交わせば、自信のほどがうかがえました。

 

◆収穫は、準備したディフェンスの実践

 

 でも、日体大は頑張りました。試合テーマが、「ディフェンス」、前に出て止めるタックルでした。前半の“青ゼブラ”ジャージも、後半の“赤ゼブラ”ジャージも、厳しいタックルを見せてくれました。こちらの胸も熱くなりました。

この日、秋廣秀一監督は関東ラグビー協会のオールスター戦の準備のため不在でした。代わって指揮したヘッドコーチ格の湯浅直孝コーチも、「体力が足りなかったのはシンプルに(課題として)受け止めないといけない」と言いながらも、ディフェンスに関しては満足そうでした。

「やろうとしたこと、ディフェンスでの前に出てのプレッシャーというところは、みんなよく表現してくれました。ただ、点としてみたらすごく頑張っているけど、それがあと何回、継続できるか…。継続性がまだまだ、ですね」

 前後半でメンバーは入れ替わりました。どちらのハーフとも、日体大がトライを先取しました。前半16分、スクラムをぐいと押し込んで、相手のディフェンスの出足を鈍らせ、SH伏見永城くんが右スペースへ持ち出しました。CTB嘉藤匠悟くんにつなぎ、WTB重見竜之介くんが右中間に飛び込みました。ナイス・スピード!

 

 ◆スクラム、ラインアウトは安定

 

 それにしても、スクラム、ラインアウトは安定していました。ベンチで観戦した伊藤拓哉主将は「収穫は、FWのセットプレーです」と振り返りました。「統一されたディフェンスにも、上のチームが刺激されますね」。ディフェンスでいえば、ロック石塚翔真くん、フランカー家登正旺(かと・まさあき)くん、ナンバー8岡部義大(よしひろ)くんの「コクトチ(國學院栃木高)トリオ」のタックルは強烈でした。めちゃアツい。出身校の吉岡肇先生の熱血指導のたまものでしょう。

 トライ数は、前半が日体大1本で早大3本、後半は日体大2本で早大5本でした。スコアは差がつきましたが、接点、球際の厳しさはほぼ互角でした。ただ、パスなどの基本スキルやイーブンボールへの反応、そして体力が課題として残りました。

 加えて、目に見えない勝利への執着の差でしょうか。いわゆるプライドの強弱です。早大のスローガンが『ワセダファースト』です。ふだん、日本で一番練習しているとの自負です。大学日本一をめざしているとの覚悟です。もちろん、『日体プライド』も垣間見えたのですが。

 

 ◆幸せそうな親子3人のワンショット

 

 後半、最初のトライはCTB鈴木一平くんのナイスランでした。授業態度も練習同様、真面目な好青年です。腰痛で戦列を離れていましたが、復帰戦で光り輝きました。ラックからの左オープン。相手のラインディフェンスのずれを突くカットインから、約40メートルを走り切りました。試合後、「ナイストライ!」と声をかければ、一平くんは汗だくで笑みをこぼしました。「ありがとうございます」と。

 「(トライは)得意のコースでした。復帰戦として、いい経験になりました。自分としては負けていない感じでしたが…。後半残り20分のフィットネスが課題ですね」

 早大から学んだ点は?と聞けば、一平くんはこう、即答しました。

 「ボールへの嗅覚です」

 実は一平くんのご両親がグラウンドに来ていました。母はフォトグラファー役です。ラグビー経験がある父が「スピードは活かしていました。バックアップのディフェンスはよくいっていたと思います」と褒めれば、母は成長した息子を楽しそうにカメラに収めていました。

 一平くんがトライをしたインゴールあたりで、保護者仲間が親子3人の写真を撮りました。「はい、チーズ!」。いい光景です。

気分はどう? 一平くんが真顔で漏らしました。「むちゃくちゃありがたいです。結果を残して、親孝行したいです」

それを聞いた母が顔をくしゃくしゃにしました。「あ〜〜。涙がでてきました」。

 つくづく思います。今の時代の学生ラガーは幸せだな、と。多くの学生が、保護者から深い愛情をそそがれています。これは断言できます。子どもは親への感謝を知れば知るほど、目に見えぬ“頑張る力”が増していくのです。

       (ラグビー部長・松瀬学)

<写真は鈴木さとみさん撮影>

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