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2023.08.19.

まっちゃん部長日記 part15

松瀬部長のコラム「まっちゃん部長日記」part15を更新しました。

ぜひご覧ください。

『大学ラグビー夏の陣、スタート。いざ日体大もスイッチ・オン!』

 

 

 いざスイッチ・オン!

 燦燦(さんさん)と降りそそぐ陽光、高原ならではの涼風が吹く。夏のラグビーの聖地、長野県菅平高原にラガーマンの掛け声が流れる。激しいバトル、飛び散る汗。復活をめざす日本体育大学ラグビー部の夏合宿がこのほど、始まった。

 18日の午前練習。ざっと90人。部員の円陣の中で、伊藤拓哉キャプテンが声を張り上げた。

 「チャレンジするぞ!」

 ひとつひとつの練習メニューに、練習試合に。いや自分の限界に。試練のハードワークだ。この合宿で積み重ねた努力の集積と流した汗の結晶が秋シーズンのチーム力の伸び幅につながる。

 

 ◆「OBだって悔しがっている」

 

 この日は、ラグビー部OBや保護者の姿もグラウンドにあった。大阪の西坂啓二・前OB会会長も「激励金」を持って、来てくれた。練習の開始前、全部員を前に檄を飛ばした。昨季、関東対抗戦グループのBリーグ(2部)に転落。

 「現役もだろうが、OBだって悔しがっている。その悔しさを今年、晴らしてほしい。絶対に今年、A(1部)に上がってほしい。夏合宿のがんばりが絶対、秋に結び付くぞ」

 ストレッチからラン、パス、コンタクト練習とつづく。ブルーのハンドダミーを抱えた相手に対し、カットイン・ショートで走り込む。からだを沈め、激しくヒットする。駆け抜ける。

 ヘッドコーチ格の湯浅直孝コーチの声が飛ぶ。

 「スピードをチェンジしないと意味ないぞ!」

 「スピード、スピード」

 「入る瞬間、沈む! タックルくるよ」

 

 ◆学生トレーナー「緊張しています」

 

 からだを痛める選手がいれば、グラウンド周りにいる渡辺清ヘッドトレーナーや学生トレーナーたちが飛んでいく。

 学生トレーナーの深津乃愛さんは3年生。2年途中にけがでライフセービング部を辞め、ラグビー部のトレーナーになった。からだのケアや他人のけがを予防し、がんばっている人を応援するのが好きなのだ。

 深津さんの動きもまた、メリハリが効いている。ご気分は? と聞けば、明るく言い放った。

 「私も緊張しています」

 

 ◆秋廣監督「120%の挑戦」

 

 秋廣秀一監督は、この夏合宿を「セレクションの場」と位置付けている。

 「秋のシーズンに向けての、激しいポジション争いをしてほしい。自分に妥協せず、自分に厳しく。自分でレギュラーをとりにいく。いわば、120%の挑戦です」

 

 ◆合同練習で意地が激突

 

 午後は、國學院大學ラグビー部の専用グラウンドに行き、合同練習だった。練習直前、秋廣監督が円陣で声を出した。

 「スイッチ・オンで行きましょ」

 東芝で活躍した伊藤護さんが指揮をとる國學院大學はリーグ戦グループB(2部)、日体大が対抗戦グループB。いずれもA(1部)入りを目指す立場は似ている。必死なのだ。タックルあり、コンタクトありの、試合さながらのアタックディフェンスでは互いの意地とプライドがぶつかった。

 日体大は最初こそ、受け身だったけれど、途中でセンターの甲斐倖之助選手の猛タックルが炸裂、他の選手の魂に火をつけた。

 タックル、タックル、またタックル。倒れてもすぐに立ち上がり、自分のポイントに戻る。それぞれのポジショニングも改善され、ダブルタックルもよく決まった。

 

 ◆迫力のスクラム練習

 

 その後は、FW、バックスに分かれてのユニット練習。スクラムは見応え十分だった。フッカーの戸松佳翔選手、プロップの髙山達也選手、由地蓮選手、吉田伊吹らが汗だくになりながらも、國學院大FWをぐいぐい押し込んだ。

 「ラスト!」。國學院大學ラグビー部のスポットコーチを務める笠井建志さんの声が飛ぶ。東芝のスクラムの支柱として活躍した元日本代表プロップ。ラストと言いながら、あと1本、あと1本と本数が増えた。

 

 ◆伊藤主将「思い通りにいかないことも」

 

 やっとで合同練習が終わる。真っ黒に日焼けした伊藤キャプテンは言葉に充実感を漂わせた。

 「久しぶりの実戦形式の練習でした。違う大学を相手にからだをぶつけあうと思い通りにいかないことがたくさんありました。そこが課題です」

 帰り支度を始めると、遠くの山を覆う黒い雲から雷の音が聞こえてきた。しばらくすると、激しい夕立が降り出した。からだの火照りをしずめるかのごとく。

 

 ◆「スリー・チアーズ・フォー」

 

 翌日、19日の土曜日。朝、寝ぼけまなこの部員がぞろぞろ、グラウンドに出てきた。午前6時。練習がはじまった。

 冒頭、秋廣監督が声を出した。

 「さあ、みんなで成長を続けましょ」

 同監督は、この夏合宿の練習ゲームから、試合後、エールの交換をしようと提案した。ラグビーのよき文化を復活させようと。

 みんなで練習だ。リード役がうまく言えず、笑いの渦ができる。

 「スリー・チアーズ・フォー、〇〇〇(対戦相手)」。ゲームキャプテンが続けて、親指を横から上に立てる。「ヒップ、ヒップ」。他のメンバーが全員、声を合わせて、「フレー、フレー」と親指を立てる。

 さあ、みんなで一緒に。

 「フレー! フレー!」

 

 日体大の夏合宿は28日まで。あえて厳しい鍛錬に挑戦することで、選手もチームも劇的な成長を遂げるのだった。(松瀬学)

 

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