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2023.08.28.

まっちゃん部長日記 part16

『高原に咲いた信頼~日体大ラグビー部、菅平夏合宿打ち上げ』

 

 充実の夏合宿の打ち上げです。長野・菅平高原です。まぶしい陽光、ずいぶんと涼しくなった高原の風。真っ黒に日焼けした日体大ラグビー部員たちに笑顔がはじけます。

 菅平のメインステージともいえるサニアパーク、その小高い位置のBグラウンド。部員の円陣の中で、伊藤拓哉キャプテンが一本締めで締めます。

 「ィヨーオッ!」

 はい、みんなで両手を強くたたきます。パァ~ン。合宿が終わった解放感からでしょう、次々と歓声が沸き起こりました。

「ウォー!」

「ヤッタ~!!」

「イェ~!!!」

キャプテンはいつも全力です。からだを張ります。その熱血漢が夏合宿を総括しました。

「合宿の成果は、まとまりのところでしょうか。どのカテゴリーの試合に対しても、全員が情熱を持って取り組めたと思います。最後、いい形の勝利で終わってよかったなと思います」

個人的には? と聞けば、主将は「もっと」と語気を強め、右手で空となったパイナップルジュースの紙パックを握りつぶしました。

「もっともっと、フィットネスを上げていきたい」

 

◆中京大を圧倒。秋廣監督「ナイスゲーム!」

 

 8月27日。夏合宿最後の試合の相手は、古豪の中京大でした。40分の3本勝負。日体大、中京大とも、Aチーム、Bチームの混合でそれぞれメンバーを編成しました。最初の2本が、前後半のメインゲームという作りでしょうか。

 炎天下の午後零時半、キックオフです。31-5、31-7、14-5と日体大は相手を圧倒しました。1本目、2本目を通常の試合の前後半とみると、62-12です。3本トータルだと、76-17となります。

 スコアはともかく、試合内容がよかったです。最後というのもあるでしょうが、日体大はみんな、相手に挑みかかる気概に満ち溢れていました。接点で当たり勝ったのです。ブレイクダウンでファイトしました。

 フィジカルバトルとつなぎの意識、一人ひとりがよく前に出たのです。スクラムでこそ、苦しみましたが、攻めにリズムがありました。今季のチームスローガン、『Battle』を体現したのです。

 試合後の円陣で、秋廣秀一監督が開口一番、こう言いました。

 「ナイスゲーム!」

 監督は、真っ黒に日焼けした顔をくしゃくしゃにしました。部員の顔を一人ひとり見ていきます。言葉を継ぎます。

 「今日、ひとつわかったのは団結力です。チームがまとまるということで、こういったゲームができるのです。ネガティブワードを無くし、互いのポジティブな声掛けも効果的でした。よかったとおもう。この調子で、シーズンもやっていきましょう」

 

 ◆湯浅HC「トライの取り方もディフェンスもよかった」

 

湯浅直孝ヘッドコーチ(HC)も笑顔でした。合宿での練習の成果が出たからでしょう。ゲームプランがほぼ遂行できたからでしょうか。こう、円陣で声をはずませました。

 「今日は、トライの取り方もよかったし、ディフェンスもやろうとしたことはできたと思う。いい合宿だった。練習でやったことを忘れずに、これからも継続していこう!」

 

 勝つっていいのです。勝つことでチームはぎゅっとひとつになります。

 秋廣監督の言葉通り、『団結の勝利』でした。キックオフ直後、相手ボールのラインアウトのミスを突いて、逆襲しました。SO小田晴陽くんがディフェンスラインのスキを逃さず突いてゲインします。順目の右に回して、CTB齋藤弘毅くんが快足を飛ばして右隅に先制トライを挙げました。

 その5分後、またも相手ボールのラインアウトをターンオーバーし、プロップ吉田伊吹くんが突進し、好フォローしたロックの石塚翔真くんが右中間に飛び込みました。

 もうイケ、イケです。モメンタム(勢い)に乗っています。練習通り、順目、順目のいいテンポで回して、最後はフッカーの萩原一平くんがボールを持つ左手をぐいと伸ばしてトライ、続けてフランカー長船鉄心くんが持ち前の鋭利するどいランでポスト下に駆け込みました。前半15分でなんと4トライを先行したのです。

 攻撃ばかりではありません。ディフェンスも面となっていました。特に地味ながらも、フランカー大竹智也くんの猛タックルはいぶし銀の輝きを放っていました。(実は途中でヒタイを裂傷し、麻酔なしで4針縫ったそうです。「めちゃくちゃ痛かったです」とは泣き顔の大竹君の弁)

 前半20分、中京大のWTBに走られ、1トライを返されました。でも、すぐに反撃です。つないで、この日絶好調のCTB齋藤弘毅くんがタックルを受けた後、ピック&ゴーでゲイン。ロックの好漢、岸祐融(ゆうすけ)くんが大きなスライドでポスト下にトライしました。ゴールも決まって、31-5と大量リードしたのです。

 また、前半途中、SH小林峻也くんが負傷退場し、日高柊(しゅう)くんが交代で入りました。日高くんのエリアを稼ぐハイパントは絶妙でした。

 唯一の反省は、スクラムでしょうか。外からステップアウト気味に内側に組み込んでくる相手1番(左プロップ) に右プロップの吉田くんがうまく対応できませんでした。これは吉田くんだけではなく、フッカーの萩原くんの寄り、左プロップの高山達也くんとの結束が大事になります。要は、FW8人がパック(固まり)となれるかどうかでしょう。

 

 ◆保護者「信頼関係を感じます」

 

 この日もグラウンド周りには保護者の姿が目につきました。遠方より、菅平まで応援に駆けつけてくれたのです。感謝、感謝です。部員たちは応援されることでより頑張れるのです。いい光景でした。

 この日活躍したFB大野莉駒(りく)くんのご両親もいました。試合前、今年のチームの印象を聞きました。

 「ことしはどうですか?」

 「昨年と比べ、チームの雰囲気がずいぶんとよくなったと聞いています。明るいんです。互いの信頼関係を感じます」

 

 4年生のキーワード「自己犠牲」

 

 戦い済んで日が暮れて。

 ご馳走の夕食のあと、近くの食堂で4年生のスペシャルミーティングが開かれました。チームの団結をつくるチームビルディングの一環です。4年生21人中、けがなどによる合宿不参加者を除く16人が集まりました。

 秋廣監督、渡邊徹コーチも参加しました。ふだん思っていることを打ち明け、ポジティブなディスカッションは熱を帯びました。笑いが絶えません。4年生がまとまらないと、どうしたって『ワンチーム』にはなりません。

 最後、よしっ、4年生だけの合言葉をつくろうとなりました。

 「つながり」「奮闘」「貫徹」「きずな」「笑顔」「命がけ」「圧倒」「責任」…。いろいろな言葉が飛び交い、最終的にこう、決まりました。

 「自己犠牲」

 4年生は昨年、悔しい思いをしました。チームは2部に降格しました。ことしの目標はもちろん、『一部復帰』です。そのためには、最上級生は自己犠牲をするしかないぞ、との覚悟なのでしょう。いわば「フォア・ザ・チーム」です。

 

 ◆シーズンでも、勝って、みんなで喜ぶ姿を

 

 毎度の長文、失礼しました。

 若者の熱に触れると、どうしても文章が長くなります。夏合宿は、きっとチーム変ぼうの契機となるでしょう。

 さあ、勝負のシーズンに移ります。ここからは、信じたやつが勝ちます。己を、仲間を、チームの勝利を。

 

 そういえば、最後の中京大戦でこんなシーンがありました。

 管制塔の上から一緒に試合を見ていた学生コーチ(分析担当)の4年生、朽木泰智くんがつぶやいたのです。視線の先にはノーサイド直後、喜ぶ仲間たち。

 「僕は、いつも、勝って、みんなが喜ぶ姿がみたいんです」

 ああ、ここに信頼があります。夏合宿中、63歳の誕生日を迎えたオッサン部長の涙腺がつい、ゆるんだのです。 

             (松瀬学)

 

【夏合宿の戦績】

〇日体大CDvs東京外国語大学

100-10

 

●日体大Avs大阪体育大学

22-41

 

〇日体大Bvs大阪体育大学

22-0

 

〇日体大CDvs帝塚山大学

40-5

 

●日体大CDvs愛知学院大学

10-22

 

●日体大Avs福岡工業大学

26-47

 

〇日体大CDvs山梨学院大学

56-12

 

〇日体大ABvs 中京大

76-17

             以上。

写真は①~③が保護者の大野清美さん撮影、④が保護者の矢部雅彦さん撮影、⑤~⑪は筆者より

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