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まっちゃん部長日記 part18
「規律乱れるも、余裕の開幕2連勝―成長途上の日体大」
ラグビーワールドカップでも、関東大学対抗戦Bグループでも、どんなステージでも、勝負に挑む選手たちの気概は変わりません。A復帰をめざす日体大が、昨年B7位の学習院大に57-19で大勝し、順当に開幕2連勝としました。ひと安心です。
秋分の日の9月23日です。暑さも少し和らぎました。フランスからの帰国直後、時差ボケ頭をひっさげ、東京は目白の学習院大グラウンドに向かいました。場所をネット検索すれば、「JR目白駅から徒歩30秒」とあります。サン・ジュウ・ビョ~ウ。実際、腕時計で測ったら大学正門まで52秒でした。
まあ、そんなことはどうでもいいのです。グラウンドは薄茶の高層校舎と緑の木々に隣接した綺麗な人工芝です。さすが、多くのロイヤルファミリーの母校です。高貴な風情が漂っているのです。
◆日体FWがセットプレーで圧倒
グラウンドでは、気力充実の日体大の学生たちから覇気が発散されていました。掛け声も元気いっぱいです。いいぞ、いいぞ。日体ボールで午後3時キックオフ。「ふっきメシ」の効果でしょうか。たくましい日体FWがどとうの攻めを仕掛けました。
「ファースト・タックル!」とグラウンド周りの部員から掛け声が飛びます。この日の「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」となるフランカーの大竹智也くん、ロックの逢坂侑大(ゆうた)くんがダブルタックルで相手をつぶします。主将の伊藤拓哉くんがからだを張ります。センター勝目龍馬くんが猛タックルで相手ノックオンを誘いました。
日体ボールのファーストスクラムです。ぐいぐい押し込んで、コラプシング(故意に崩す行為)の反則をもらいました。PKをタッチに蹴り出して、このラインアウトからのドライビングモールをぐりぐり押し込んで、ラグビーセンス抜群のフランカー長船鉄心くんが左中間にトライしました。開始わずか4分。ゴールも決まって、7点を先取しました。
もうイケイケ、どんどんです。前半7分、10分と、同じくモールを押し込んで、トライを重ねます。前半20分には、SH小林峻也くんが相手陣形をよく見て、敵陣ゴール前にゴロキックを転がし、左ウイングの辰己一輝くんが左隅に押さえました。
25分に、もういっちょ、ラインアウトからのドライビングモールでトライを加えました。その後、相手にトライを許しましたが、前半38分、左右に展開し、SO小田晴陽(はるひ)くんが大外オープンに蹴って、ウイング辰己くんがジャンプして内側にボールを弾き、FB大野莉駒(りく)くんが捕ってインゴールに飛び込みました。ナイス! 連係です。
地味ながらも、ラインアウトでのロック岸佑融くんの頑張り、突進も光りました。
前半終了間際、1トライを返され、40-12で折り返しました。なんだか、嫌な流れです。この日の空模様のごとく、晴れ間が見えたと思ったら、小雨ぱらつく曇天になったようなものです。後半は、リズムが悪くなりました。
◆ペナルティーがなんと20個
攻めに迷いが出たからでしょうか。FW戦だけでなく、もっとテンポよくバックスでトライをとりたくなったからでしょうか。チームの結束が崩れれば、相手に逆襲のスキを与えることになります。
「規律」です。後半開始10分でスクラムのコラプシングやハイタックルなど、日体は4つのペナルティーを相次ぎ犯してしまいました。試合では、なんと20のペナルティーです。これではリズムに乗れません。メンバーを入れ替えたこともあり、どうもスピードあるアタックがちぐはぐしてきました。
後半最初のトライは、学習院大にモールを押し込まれたものでした。それでも、SO小田くんがインターセプトから40メートル走り切ってのトライを加え、ノーサイド寸前にはSO小田―FB大野―WTB辰巳と、日体らしいつなぎでダメ押しトライを奪いました。収穫と反省と。小雨が選手たちの火照ったからだを癒します。
◆勝って反省
秋廣秀一監督や湯浅直孝ヘッドコーチの表情は硬いものでした。いつも、Aグループの大学との勝負を意識しているからでしょう。
秋廣監督は「フラストレーションのたまった試合でした」と漏らしました。
「セットプレーはよかったんですけど、ブレイクダウンのところで反則を多くとられました。規律ですね。20個も反則をしていたら…。テンポが悪くなりました」
伊藤主将はこうです。
「勝ったという結果はよかったです。でも、全員、(大量リードに)甘さが出て、受けた部分があったと思います。基本に戻って、また頑張っていきたい」
スクラムを押しながらも、コラプシングの反則を犯した髙山達也くんは「イケるイケるで行っちゃったんで、たぶん、相手の小細工に引っかかってしまいました」と反省し、「自分たちのスクラムの形をしっかりつくっていなかったんです」と言いました。
◆ハイタックルは下半身にも注意
それにしても、反則が20とは。アフターマッチファンクションで試合の笛を吹いてもらった山形壮平レフェリーに話を聞きました。日体選手のどこが悪かったのでしょうか、と。
とくにハイタックルの反則です。ラグビーのルールでは「タックルは肩の線より下」と決められています。でも、最近は「胸より上はハイタックルの反則」と解釈が変わっています。故意かどうかは関係なく、ハイタックルに関してはシンビン(10分間退場のイエローカード)となることも珍しくありません。
日体はこの試合、何本もハイタックルの反則をとられました。山形レフェリーによれば、接触位置はもちろん見ますが、下半身の姿勢にも注目するそうです。タックルに行く際、腰を下げているか、ひざを曲げて、低くいこうとしているかどうかだそうです。
タックルの位置が微妙な場合、下半身が沈んでなければペナルティーを吹くことになります。つまり、下にタックルにいこうというマインドがあったかどうかなのでしょう。日体の選手は下半身が沈まない傾向があるとみられたようです。
特にダブルタックルの二人目は要注意です。ボールに行く際、腰は沈めて下にいく意志をみせないといけないわけです。これはスキルです。練習から意識する必要ありでしょう。
ついでにいえば、ラグビーのルールは「ロー(法律)」です。その精神を大事にしています。ラグビー憲章の頭には「ラグビーは公平なしっかりとした争奪戦をしないといけない」とあります。相手の無防備な胸の上を狙うのは不公平なのです。
◆大竹「お互い、頑張っていきましょう」
何はともあれ、スポーツの世界、勝って反省できるのは理想でしょう。
ラグビーならではのアフターマッチファンクションで、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ賞の紺色キャップをかぶった大竹くんはこう、両チームの選手を前にスピーチしました。
「タックルが自分の武器なので、今日は誰よりもタックルしようと思っていました。まだ2試合。これからも、お互い、頑張っていきましょう」
学習院大、あるいはレフェリーや保護者へのリスペクト。周りへの感謝の念が個人とチームの成長を促すことになります。
願わくは、A復帰のため、反則ナシの努力を。「ロータックル」の徹底を。
(松瀬学)
①~⑥は保護者:森屋朋子さん撮影、⑦~⑩は筆者撮影