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2023.10.10.

まっちゃん部長日記part19 日体大対上智大

『反則は3つに激減。日体大が規律を守り、開幕3連勝』

 

 世界の各地でラグビーの激闘がつづきます。ワールドカップで日本代表がアルゼンチン代表に屈した日曜日、関東大学対抗戦Bグループ(2部)では日本体育大学が昨季6位の上智大に83-7で大勝しました。これで順調に開幕3連勝です。

 10月8日、横浜・日体大健志台キャンパスのラグビー場です。正午ごろ、青葉台駅から日体大行きの路線バスに乗ると、部員の保護者もたくさんいました。中には、部員のバンメシ(手作りハンバーグ…)入りのバスケットを下げた母親も。親子の情は、森より深く、山よりも高いのです。

 

 ◆試合テーマは「失点0、反則0」

 ラグビー場に着くと、グラウンドの脇に小さなホワイトボードが置かれていました。試合の目標が黒マジックで描かれていました。

 <ゼロ作戦 0 失点・反則>

 ひとつ前の試合、つまり2週間前の学習院大戦で日体大は57-19で大勝しながらも、3本(日体大は9本)のトライを許し、20個もの反則を犯しました。ペネルティーの多くがハイタックルです。

 今週は試合準備の練習から規律を意識していたようで、反則は3個にとどまりました。許したトライが1個(日体大は大量13トライ)です。目標には随分と近づきました。

 秋廣秀一監督は大勝にも、顔は少し歪んでいました。「目標を達成できなかったことが悔やまれます」と漏らしました。

「ペナルティーが前半2つ、後半1つ。厳しくみると、それではダメなんです。確かに、前の試合より、ディフェンスはよくなりました。ただ、攻撃では、後半になると雑になっていきました。ハンドリングエラーが増えるのです。それは減らさないといけません」

 

◆フェラーリ辰己くんも爆走

キックオフ。ナンバー8伊藤拓哉主将の地を這うようなタックルが、チームの闘志に火を付けます。フランカーの大竹智也くん、鈴木幸人くんが相手に刺さります。ロックの岸佑融くんが敢然とジャッカル。

前半3分。敵陣ゴール前でPKをもらい、スクラムを選択します。これをプッシュし、オーソドックスなライン攻撃からセンター齋藤弘毅くんがポスト下に飛び込みました。先制トライです。

スクラムで上智大を圧倒します(左プロップ築城俊汰くん、フッカー萩原一平くん、右プロップ吉田伊吹くん、ブラボー!)。そうなれば、フロントロー陣は元気が出ます。吉田くんが左隅に力でトライを奪います。岸くん、ナイス!サポート。

その後、岸くんがトライをもぎとり、スポーツカーの「フェラーリ」(説明役の廣建進くん曰く)と異名をとるウイングの辰己一輝くんが髪をなびかせてトライを重ねていきました。速いのなんのって。

 

 ◆CTB勝目くん「すごく光栄です」

 結局、前半は7トライをマーク。後半も、FW、バックス一体となった攻めで6トライをもぎ取りました。後半、ハンドリングミスが出始めました。スキル不足もあるでしょうが、パスに優しさが足りないのです。

 『プレーヤー・オブ・ザ・マッチ』は、攻守に活躍したCTBの勝目龍馬くんでした。「ひと言ください」と言えば、「ひと言だけですか?」と聞き返すひょうきん者です。

 「なんですかね。すごく光栄です」

 そう言って笑うと、己のプレーの成長を説明してくれました。サイドとバックを刈り上げた外国人のくせ毛風パーマ頭です。「スペインカール」と言うそうです。

「前の試合(学習院大戦)では、ハイタックルの反則をめちゃめちゃ取られて…。自分だけで5本。でも、今日は、そこは修正できて、タックルは下にはいれて、ハイタックルの反則は1本もナシでした」。

 ちょうど、ロックの岸佑融くんが近くを歩いていたので、ペナルティーの話題を振りました。「僕はハイタックルを1つ、取られました」と実直に振り返りました。向上心旺盛。

 「実は横の動きのディフェンスがまだ、苦手なんです。高い姿勢のまま、相手を追いかけて、(胸の)上に行ってしまいました。もっと、ディフェンスのレンジ(角度)を広げていきたいです」

 

 ◆岡部くん「1年でダンガラを着る」

 この日、1年生が2人、試合に出場しました。ひとりが、公式戦初先発の岡部義大(よしひろ)くん。日体大OBの吉岡肇さんが監督を務める國學院栃木高出身です。抜群の運動量でした。そう言うと、表情を崩しました。

 「はい。たくさん、走りました。ハードワークができたと思います」

 さすが、コクトチ。たしか、モットーが『鉄のスクラム』と『紺の壁』。

 「コクトチで学んだ組織的なディフェンス力を日体でも生かしたい。まだフォワードとバックスにギャップができているので、もっとワンラインにできるようフィットネスを上げていきたいです」

 ふだんはフランカーですが、ロックにけが人が続出し、この日、ロックで初先発の出番が回ってきました。日体入学時の目標が「1年でダンガラ(段柄)を着る」だったそうです。ダンガラとは、紺色と水色の横縞の日体レギュラージャージ。

 「目標を達成できました。点数つけると、80点です」

 もうひとりの1年生が、途中交代出場の三浦海(うみ)くんでした。こちらも日体大OBの品川英貴さんが監督の長崎北陽台高出身。強豪高校のOBの方々にすこぶる感謝です。

 タテ突破の鋭いランは、品川さんの現役時代をほうふつさせるものでした。

 

 ◆OB「まだワンチームにはなっていない」

 小雨がぱらつく中、スタンドには多数の保護者、日体OBの姿がありました。ラグビー場の雰囲気がどこかあたたかいんです。

 みなさんと談笑し、ある日体大OBと青葉台の駅前のカフェでコーヒーを一緒に飲みました。午後8時から日本×アルゼンチン戦があるので、厳選30分です。

 試合の印象を聞けば、日体大の熱血OBは「ダンガラのプライドをもっと持ってほしい」と語られました。

 「試合に出ていないノンメンバーの真剣度が足りないのでは。まだ“ワンチーム”になっていない印象ですよ」

 今季の至上命令、『1部復帰』を果たすには、試合に出ない部員たちの心の持ちようも大事なのでしょう。

試合メンバーは、試合に出られない部員の分までがんばります。ノンメンバーは、試合に出ているメンバーと一緒になって闘います。それがワンチームなのでしょう。

ワールドカップの日本代表は、負けましたけれど、ワンチームにはなっていました。日体大のめざす姿です。(松瀬学)

①~③が筆者撮影、④~⑨は森屋朋子さん撮影、⑩~⑬は渡邊祐子さん撮影

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