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2023.10.31.

まっちゃん部長日記part22 【日体大×武蔵大】

「W杯の感動をエネルギーに。『パブ・ファイト』で、日体大が無傷の5連勝」

 

 感動はエネルギーとなります。ラグビーワールドカップの決勝の死闘があった日曜日、日本体育大学ユニコーンズもファイトしました。関東大学対抗戦Bグループの4戦全勝同士の対決でした。日体大は12トライの猛攻を武蔵大に浴びせ、76-0で圧勝しました。これで順調に無傷の5連勝です。

 

 ◆キーワードは「パブ・ファイト」

 

 29日。陸上自衛隊朝霞駐屯地そばの武蔵大学朝霞グラウンドです。小雨がぱらつく午後1時キックオフ。周囲には、野球場、ラクロス場があり、学生たちの元気な声がラグビー場のスタンドまで聞こえていました。

 「パブ・ファイト」、これがこの試合のキーワードでした。秋廣秀一監督によると、パブ(酒場)で酔っぱらった連中に絡まれた仲間を助けるため、相手を排除するイメージだそうです。つまり、ボール争奪戦のブレイクダウンで、二人目、三人目が相手を激しく払いのける動きを指すのです。特に二人目の寄り。

 試合開始直後、フランカー大竹智也くんの猛タックルが炸裂しました。さらに伊藤拓哉主将の地を這うタックルも決まります。タックルはチームに勢いをつけます。

 

 ◆伊藤主将「すごかったですね」

 

 伊藤主将はこの日、午前4時からのワールドカップ決勝をライブでテレビ観戦したそうです。「すごかったですね。南アフリカみたいな強度のプレーに少しでも近づきたいです」。その闘気はとくにタックル、ブレイクダウンに見えました。パブ・ファイトです。

 前半8分、ラインアウトからのモールをぐりぐり押し込んで、1年生ロック岡部義大(よしひろ)くんがインゴールでボールを押さえました。その3分後、CTB齋藤弘毅くんが自慢の突破力を生かし、中央に飛び込みました。

 もう、イケイケです。副将のSH小林峻也くんが左右にボールをさばきます。前半15分、オレンジ色スパイクのFB大野莉駒(りく)くんが小刻みなステップを踏んでインゴールに駆け込みました。小林くんのゴールも決まって、19-0としました。

 その後もラインアウトモールを押し込んでのトライのあと、前半終了間際には、CTB齋藤くんからFWのプロップ築城峻汰くん、ロック岡部くんとつなぎ、岡部くんが左隅に飛び込みました。31-0で折り返しました。

 

 ◆後半もトライ・ラッシュ、相手をノートライ

 

 後半もパブ・ファイトです。タイミングよくボールが出れば、バックスのスピードも生きてきます。説明役の廣建進くんの言葉を借りると、スポーツカーの「フェラーリ」と形容されるWTB辰己一輝くんが快足を活かして2トライを加えます。FWもスクラム、ラインアウトで圧倒し、フィールドプレーでもよく走り、ロック岸佑融(ゆうすけ)くんも豪快なトライをマークしました。

 最後は、途中交代出場のCTB鈴木一平くんがトライで締めくくりました。直後のコンバージョンキック。びっくりしました。ワールドカップの南アフリカのWTBコルビが準々決勝フランス戦で見せたような、キックチャージを食らってしまったのです。

 完勝です。何といっても、相手をノートライに封じたことがうれしいですね。いつも辛口の湯浅直孝ヘッドコーチも、「ディフェンスはよくなってきました」と声を弾ませました。

 「しつこさというところにこだわって、抜かれてもすぐに戻るとか、そういうマインドセット(心構え)ができているのかなと思っています」

 課題を挙げれば、この日のペナルティーは9つでした。同じく山形壮平レフェリーに笛を吹いてもらった1カ月前の学習院大戦では、20個ものペナルティーをとられました。多くはハイタックルでした。

 試合後、山形レフェリーにお話をうかがえば、日体大は不用意な反則が少なくなり、タックルも自制(コントロール)されているような印象を受けたそうです。確かに改善されてはいますが、あくまで目標は「ペナルティーゼロ」です。

 

 ◆小林副将「うれしいです」

 

 試合の「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」(POM)は、SHの小林副将に贈られました。おめでとう、と声をかければ、「うれしいです」と顔をくしゃくしゃにしました。

 試合テーマが『パブ・ファイト』と『キックへのエスコート』でした。前日の帝京大B・C戦と同じです。すなわち、チーム全体でターゲットが統一されているわけです。そうです、ワンチームです。

 小林副将は「リズムがよくなってきています」と言いました。

 「Aだけでなく、チーム全体でやろうとしていることがひとつになっています。パブ・ファイトが徹底されれば、生きたボールが出やすくなって、日体らしいアタックができるんです。(今日は)さばきやすかったです」

 でも、と言葉を足しました。

 「(FWが勢い余って)越え過ぎて、ボールがハダカになっているシーンもありました。そこは修正です」

 

 ◆勝負はここから。あと3つ!

 

 さあ、ここからが勝負です。

秋の対抗戦Bグループはあと2試合、Aグループとの入れ替え戦を含めると、残るは3試合です。A(一部)復帰まであと勝利3つ。

伊藤主将は、気合を入れ直します。勝って兜(かぶと)の緒を占めて、です。

「対抗戦も最終戦が近づくにつれて、相手の強度であったり、しつこさであったり、レベルが上がってきています。そういうところで、最初、受けてしまうと、修正ができなくなっていきます。そこが課題です」

パブ・ファイトは?

「相手をはがし切れていない部分だったり、はがし過ぎてしまっている部分だったり、ボールがフリーになっているケースがあったり…。見極め、使い分けをもっと意識したいです」

うれしいのは、スタンドに保護者、日体大OBの姿が増えてきていることです。応援は間違いなく、チームの力になるのです。

下から3段目のスタンドでは僕の隣に渡邊徹コーチのお父さんが座っていました。お母さんはグラウンドで写真撮影です。ご夫婦で山梨から車で約2時間をかけて来られたそうです。ありがたいことです。

周りから応援されるチームは強い、が僕の持論です。いわば一部復帰のムーブメントです。さあ、みんなで上昇気流に乗りましょう。

(松瀬 学)

①~⑨が渡邊祐子さん、⑩~⑰は岸健司さん、⑱~㉑は筆者撮影

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