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2024.04.29.

まっちゃん部長日記part1 関東大学春季大会「日体大×青学大」

『1部復帰の日体大、惜敗スタートも明るい未来』

 

 いざ、勝負のトシが始まった。ラグビーの関東大学春季交流大会の開幕戦。対抗戦A(1部)に復帰した日本体育大学は、昨年度A7位の青学大に24-27で競り負け、悔しい、悔しい船出となった。

 「う~ん、勝てた試合でした」。日体大の秋廣秀一監督はそう、声を絞り出した。

 「ゲームの入りが消極的でしたね。前半は、相手のアタックにうちのディフェンスがあまり機能しませんでした。課題は明らかになりました。でも、随所に粘り強さは見せてくれました。練習の成果が、フィットネスに出ました。最後まで粘り強いディフェンスをしてくれました」

 もちろん、スポーツの世界、「勝って反省」は理想である。でも、人もチームも、いつかは負ける。とくに、戦うステージが上がった今年、場合によっては、しょっちゅう負けることになるだろう。そこで、どうするか。この悔しさをどう、秋のシーズンの栄光へと結ぶのか、が肝要なのである。

 

◆夏日の下のキックオフ、ゲームの入りで後手

 

 日曜の4月28日。全国的に高気圧に覆われ、日体大の横浜・健志台キャンパスのラグビー場もポカポカ陽気に恵まれた。夏日(最高気温25℃以上)だ。スタンドには両校の保護者、OB、ファンら約300人が集まった。緑色の人工芝にはつよい陽射しがキラキラ降り注ぎ、周りの明るい緑色の木々からは、澄んだウグイスのさえずりが聞こえてきた。「ホーホケッキョ♪」「ホーホケキョ♪」

 正午のキックオフ。昨年度のチームの経験値の違いだろうか、日体大はゲームの入りで後手を踏んだ。コールがない。静かだ。そこを、青学大に突かれ、連続展開からあっさり先制トライを許してしまった。

  萩原一平主将は、「“悔しい”のひと言です」と漏らし、こう続けた。

 「立ち上がりが悪かった部分ですね。すぐに1本とられ、リズムに乗れませんでした。あと、フォワードのところで、(スクラムを)イーブンに組まないときつくなります」

 そのファーストスクラム。マイボールだった。敵陣に攻め込みながら、ぐいと押し込まれて、ボールをコントロールできず、ターンオーバー(攻守逆転)を許した。

 日体大の先発フロントロー陣は、左からプロップ築城峻汰、フッカー萩原一平主将、そして、けがを押して出場の右プロップ中野佑晟。内気味に組み込んでくる相手の左プロップに苦労したが、2本目のスクラムからは互いのパックを強めるなどして修正、ほぼ互角に対応していった。

 萩原は「僕らがイーブンに(スクラムを)組まないとチームはきつくなる」と口にした。

 

◆佐藤友重・新スクラムコーチ「スクラムは押されないとおぼえない」

 

 スクラムはいわばラグビーの心臓である。この優劣がチームの攻防に与える影響は大きい。そこで、スクラム強化のため、僕の早大の後輩となる、かつて名プロップで鳴らした佐藤友重さんにスポットのスクラムコーチとして加わってもらっている。

 友重さんはサングラスを外しながら、ぼそっとこう、強化の神髄を漏らした。「スクラムは押されないとおぼえない」と。

 日体大フォワードの印象を聞けば、「そこそこ、やれるんじゃないでしょうか」と言ってくれた。

 「全員が強くなりたいという志の高い子ばかりで、打てば響く感じです。全体練習が終わった後に、自ら個人練習をするという文化がもっと根付けば、さらに勝とうという気持ちも高まってくるんじゃないですか」

 ひと呼吸おき、こう続けた。言葉に熱がこもる。

 「大学のトップ4を押せるユニットをつくりたい。コツコツやっていけば、ま、カタチになると思います」

 

◆立ち上がりが悪く、3連続失トライも、反撃に転じる

 

 日体大は前半の中盤までに3連続トライを先行され、スコアは0-19とされた。ここから、反撃に転じた。30分過ぎ、PKから敵陣ゴール前のラインアウトをつくり、ロックの岸佑融がナイスキャッチした。FWが固まり、モールをぐいぐい押し込んでいく。

 インゴールに押し崩し、萩原主将がトライした。やっとでチームが勢い付く。ゴール前のピンチではフランカー大竹智也が猛タックルを相手に食らわせた。ナイスタックル、ピンチをしのいだ。

 終了間近。スクラムからのボールを、スタンドオフの大野莉駒(りく)が判断よく、ブラインドサイド奥のスペースに小さいキックパスを放った。これを、右ウイングの辰己一輝が好捕し、一気に右隅に駆け込んだ。ゴールキックは左隅の難しい位置だったけれど、左利きの大野がうまく蹴り込んだ。12-19と追い上げた。

 結果的に残念だったのは、この直後のペナルティーキックだった。位置は40数メートルの中央付近。トライ狙いのタッチキック&ラインアウトを選ばず、ペナルティーゴール(PG)挑戦を選択した。だが、これが入らず、1トライ(ゴール)差で折り返した。

 

◆ゴール前ピンチの粘り強いディフェンスに成長見える

 

 後半も青学大に先手をとられた。

 トライを追加されて12-24とされたが、このあとのゴール前ピンチの好ディフェンスで流れを引き戻した。とくに後半中盤に交代で入ったプロップ藤田幹太の猛タックルはいぶし銀の光を放った。

 後半の中盤。これまた交代出場のナンバー8岡部義大が、ハイパントからのこぼれ球に即座に反応し、マイボールとした。地味なファインプレー。FWがつなぎ、左ライン際をトンガ人留学生のロック、190センチのテビタが疾走し、約40メートルを走り切った。ゴールも決まり、17-24と追い上げた。

 この後、日体大はゴール前ピンチでまたも粘った。藤田がナイスタックル! そして、途中交代のもう一人のトンガ人新入生、愛称トムのパエラ・レワ(日体大柏高)がメガトン級のタックルをズバッと決めた。185センチ、120キロの巨漢プロップ。その体幹の強さ、フィジカルの強さには惚れ惚れする。

 直後、ゴール前ピンチのモールで190センチロックの岸が体の上からボールを奪ってターンオーバー。

 ノーサイド寸前。日体大は勝負をあきらめない。ゴールラインまで約10メートルの地点でPKをもらうと、トムがそのままゴー! どんとぶつかり、FWが結束し、右に左に押し込んで、テビタが中央にトライした。ゴールも決まって、24-24と追いついた。

 ところが、どっこい。

 相手のキックオフのボールを痛恨のノックオン。慌てたところで反則をとられ、相手に左中間30数メートルのPKを与えてしまった。このPGを蹴り込まれ、万事休した。

 24-27でノーサイド。奇しくも、昨年5月の関東大学春季交流大会(19-22)と同じく、1PG差の惜敗となった。

 引き続き、Bチーム、Cチームが、合わせて40分の3ハーフを実施し、そちらは日体大がいずれも圧勝した。陽光のもと、若い力が躍動したのだった。

 

◆大型新人、トンガ人留学生トムが爆発

 

 収穫と課題。

 トンガ人留学生の活躍は今後に向けて明るい材料である。とくに大型新人のトム。佐藤友重スクラムコーチは「(スクラムの)ヒットを覚えていけば、リーグワンで活躍する選手に間違いなくなると思います」と期待する。

 後半にこういうインパクトプレーヤーが試合に出るようになれば、チーム力はぐんとアップする。

 加えて、春の練習で重視してきたディフェンスには成長の跡がみえた。湯浅直孝ヘッドコーチは「ディフェンスは後半、よくなってきました」と評価した。

 「ゴール前のしつこいディフェンスはやってきたところなので。アタックも全部、相手のパターンを消していた。それを前半からいかにやるのか。それが、勝負の分かれ目だったのかなと思います」

 また、ラインアウトは安定していた。萩原主将のスローイングの技術も成長している。練習の成果として、フィットネスもついてきた。

 課題は、ゲームの入りとチーム内のコミュニケーション、キックチェース、不用意なペナルティー、そして二人目の寄りである。二人目のファイト。日体大自慢の『パブ・ファイト』の徹底である。

 

◆スローガンの『GUSH』って?

 

 今年の日体大は『GUSH』をスローガンに掲げる。これは、どっと流れ出る、ふき出る、噴出するといった意味で、闘争心も、サポートプレーヤーも、次々と湧き出てくるイメージなのだろう。『ハイスピードラグビー』を標ぼうしている。

 目標が、『全国大学選手権ベスト8』。彼我の戦力を比較すると、とてつもなく高い山ながら、この日のひとりひとりの鉄火のごときラグビー部員の意気に触れると、きっと未来は明るいのだった。

(松瀬学)

(写真:大野清美さん)

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