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まっちゃん部長日記@猛暑の陸上トレーニング
『勝負の夏合宿、シーズン本番へ。1部復帰のラグビー部が猛暑の陸上トレーニング』
猛暑の夏。
ひとときの陽光は日体大健志台キャンパスのえんじ色の陸上トラックにしがみつく。せみ時雨の降る中、日体大ラグビー部員が陸上トレーニングに挑んだ。
吹き出す汗。ハードルの開脚ジャンプでは大きなからだのプロップから奇妙な裏声が飛び出す。「ひぇーっ」。
パリ五輪開催中の8月8日。幸運にも、指導役は、日体大の運動部を束ねる学友会会長で、陸上部顧問の水野増彦さんに務めていただいた。サポート役が、元陸上部マネジャーの笠原洋和さん(J.VIC)。
オリンピックを見るまでもなく、アスリートの基本は「走ること」である。とくにラグビー部員は、筋力、爆発力、敏捷性、バランスなどを改善して、持ち前の「ランニングラグビー」に磨きをかけねばなるまい。
◆陸上部の名指導者、学友会会長の水野先生が直接指導
この日のスペシャル指導は、2月に次ぎ、2度目となる。水野先生の掛け声のもと、主に身体的な能力を高める「プライオメトリクストレーニング」が実施された。ポイントは、「(ランニングにおける)重心移動と体幹強化、切り替えのスピードアップ」(笠原さん)。
動静ストレッチなどのウォーミングアップのあと、まずはふたり一組となって、走りながら、メディシンボールをパスし合う。チェストパス、オーバーパス…。
トラック横の水野先生がタオルで顔の汗を拭きながら声をかける。
「ほら、相手にボールを思い切りぶつけるっ!」
「走る時、体幹がぶれないようにっ」
「ボディバランス!」
「おー。うまい、うまい」
「ミニハードルジャンプ」では、U字型のミニハードルをジャンプしながら走っていく。「ツーステップ・スキップ」「ジャンピング・スキップ」
「ジャンプトレーニング」では、ぴょんぴょん跳びはね、着地からダッシュ。
「バウンディング」では、三段跳びのごとく、左右の両足で交互に跳躍しながら前に進むことで、基礎的な脚力を養う。片脚で、あるいは両脚で。この日は、30メートルを8歩、9歩で跳躍していくことに挑戦した。オリンピック選手だと、5歩でいくそうだ。
ざっと1時間。
水野先生の声をとんだ。
「最後、走って終わりっ」
◆水野先生「走りの動きがだいぶ、よくなっている」
ラグビー部員は疲労困憊だ。みんな、荒い息をついている。トラック隅に集まって、へたり込んだ。水野先生がやさしい声で「お疲れ様」と言った。
「みんな、だいぶ、走りの動きがよくなっています。これで、測定データを記録しながら、もっと筋肉の収縮をはやめるトレーニングを継続していけば、スピードはどんどん変わっていきます。大事なことは、バウンディングやジャンプでは終わらない。そこから、必ず、ガっと走る。最後は、必ず、走りに結び付けて終わってください。そうすれば、50メートル走は必ず、タイム短縮できます」
ラグビー部員からの質問がつづく。
「50メートル走、タイムが徐々に伸びています。もっと、もっと、伸ばすためには、どうすればいいですか?」
水野先生が手足を動かしながら応えてくれる。
「今日やった練習を継続していくことです。細かいことをいえば、速く走るためには、足を速く動かさないといけない。足だけでやろうとすると限界がある。上体を使って、腕の振りを速くすれば、足は速くなるものです。ただ、腕の振りも、からだの中心からきちっとやる。まっすぐ、肩幅で前後に、こうきゅっきゅっきゅっと。こっち(左腕)のひきが右足に伝わる。それを意識すると、もっとタイムがあがります」
◆上半身と下肢、前後、左右のバランス、そして体幹強化
小粒の雨が落ちてきた。夏空には、濃いグレー色の入道雲。
水野先生は「あれ、雨が降ってきた」とこぼした。
「昔は素質がすべてと言っていた。でも、ちがう、今は素質、プラス練習、技術で足は速くなる。がんばって、やってください」
またひとり、ラグビー部員の質問がつづいた。
「上半身を鍛えることと足が速くなることの間には相関関係がありますか?」
水野先生は、「あります」と即答した。
「腕の力は足に伝わります。右の腕の振りが左足、左の腕のそれが右足に伝わります。腕が後ろにいった時に戻りが遅いと、足の動きが鈍くなります。足の速い動物を連想してください。要は、上半身と下肢のバランス、前後のバランス、左右のバランス、そして一番大事なのが体幹です。ここをしっかり鍛えてください」
◆からだに筋肉のヨロイをつけるためには栄養満点の食事も
言葉が熱を帯びる。
「あとは、しっかりと食べてください。ウエイトトレーニングをやったら、しっかりタンパク質を摂る。栄養とトレーニングは密接な関係にあります。栄養が取れないと、いくらトレーニングしても、筋肉はつきません。からだに筋肉のヨロイを付けるためには、食べてからだをつくって、からだをあてるようにしてください」
よ~い。バンッ。ラグビー部員の一本締めでノーサイド。
水野先生に感想を聞けば、「2回目(の陸上トレーニング)になりますけど、1度目に比べたら、まったく見違えるほど、よくなっています。日体大ならではの、スピードラグビーを、もっともっと磨けば、オモシロくなると思います」
萩原一平主将は一目散にトラックを後にする。追いかけて感想を聞いた。
「前期(2月)で基礎のところをやって、今日はその応用を教えてもらいました。シーズンに向けて、チームの全体的なスピードアップを図っていきたい。今日のトレーニングを継続して、それぞれが、足が速くなっていきたいなと思います」
◆日体大ならではのトレーニングで、夏合宿、秋本番へダッシュ
それにしても、ありがたいことだ。昨年は、夏合宿前にパリ五輪で活躍した世界一のレスリング部と合同トレーニングに励んだ。今年は、部員約400人を抱える陸上部の名指導者のご指導を受けた。“日体ファミリー”の団結力と底力を感じる。
勝負の夏合宿、そして秋のシーズンに向けて、関東大学対抗戦Aグループ(1部)に復帰した日体大ラグビー部の秋廣秀一監督は言葉に力を込めた。
「今日のトレーニングを、我々のランニングラグビーに生かしていきたい。ハイスピードのランニングラグビーにとって、加速する力が一番大事なところだと思います。相手に当たる時、逆を突く時、アタックする時、加速できなければ話にならない。シーズン前にこういった機会をもらったことは、チームにとって、とても大きいと思います。今日の学びを、夏合宿で自分たちのものにし、9月のシーズン開幕からスピーディーなラグビーにつなげていきたい」
そうだ、そうだ。いざ、ダッシュ!である。
(松瀬学)
撮影:松瀬部長