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2024.08.20.

まっちゃん部長日記part6@勝負の夏合宿はじまる

 熱狂のパリ五輪が終わり、勝負の夏合宿がはじまった。ここは、夏のラグビーの聖地、長野・菅平高原(標高1,250~1,650メートル)。その高地において、関東大学対抗戦Aグループ(1部)に復帰した日本体育大学ラグビー部員の情熱がほとばしる。いざ、己にチャレンジなのだ。同志と一緒に。

 強烈な日差しが照り付ける中、高原ならではの涼しい風が吹く。3日も過ごせば、顔は真っ黒に日焼けし、ラグビー部員たちは精悍さを増していく。グラウンド脇で見ているこちらも、首筋、手足が真っ赤に焼け、ひりひりして痛いのなんのって。

 

 ◆壮絶なスクラム合同練習

 

 日曜日の8月18日。午前のスクラム練習は壮絶だった。小さな郵便局そばの「46番」グラウンド。日本大学のグラウンドにのり込み、20分ハーフの練習試合のあと、30分余、強力スクラムで鳴る日大とスクラムバトルが繰り広げられた。

 「クラウチ」「バインド」。日大のスクラムコーチの掛け声が飛ぶ。力をためて、ためて。「セット」で突っかける。がっつん。日体大と日大フォワードの8人の固まりがぶつかる。

 日体大のフロントローが、左プロップの築城峻汰、フッカー萩原一平主将、右プロップ中野佑晟。相手フロントローに頭を近づけ、ひざを沈め、セットのコールの瞬間、鋭く相手の下をとりにいく。

佐藤友重スクラムコーチの鋭い声が飛ぶ。

「ニッタイ、ヨンジュウゴド(45度)!」(その意味はヒ・ミ・ツ)

 

岸佑融、テビタの両ロックも激しく突っかけ、ウエイトをぐっとかけていく。バックファイブ(両ロックと両フランカー、ナンバーエイト)も押す、耐える、我慢する。ナンバー8の岡部義大は両腕でロックを締めていく。

友重コーチの声が続く。

 「浮くな、浮くな」

 「頭、上げる!」

 「いいよ、いいよ、その取り方いいよ」

 

 ◆佐藤友重コーチ「信じてやりつづける」

 

 日大FWはでかい、強い。8人の結束もきつい。だが、日体大にも意地がある。プライドがぶつかる。近く、低く、速く。ヒット勝負。組んだら、1番が2番に寄って、フッカー萩原主将が3番に寄る。うまく寄れれば、右プロップの中野がスッと前に出る。

 互いのマイボールで2本ずつ、4本組んだら、60秒のチームトーク。それを6セットほど繰り返す。時折、メンバーを入れ替える。トータルで20数本か。やっとで「ラストッ!」の声が飛んだ。

 濃密、かつ激烈なスクラム練習が終わった。FWは疲労困憊、ゼエゼエと荒い息をついている。とくにフロントロー陣は足腰ガタガタだろう。

 友重コーチは涼しい顔で漏らした。言葉に充実感がにじむ。

 「いい形になっています。はまるといい。そのはまる回数を増やしていきます。ここまできたら、自分たちを信じてやりつづけるしかありません」

 あ・うんの呼吸、そして駆け引きは?

 「スクラムの駆け引きは本数組まないと」

 

 ◆秋廣監督「フォワードの成長を感じる」

 

 日大との合同練習のあと、秋廣秀一監督と一緒に歩いて日体大の宿舎に帰る。

 話題がスクラム練習になれば、少し表情をやわらげた。

 「春の日大との合同練習を考えると、フォワードの成長を感じました」

 そうなのだ。日体大は4月にも日大とスクラム練習に挑んでいた。「あの時はけちょんけちょんにやられていましたから」と振り返った。

 

 秋のシーズンを考えれば、チームにとって、この夏合宿が重要な鍛錬の場となる。どれだけ土台をつくれるか。厳しい練習を強いることで自信が生まれ、チームの一体感も増していくことになる。

 秋廣監督は言った。

 「春にやってきたことを、この夏合宿で試して、自分たちの強みにしたいんです」

 春の試合をレビューしたら、モールからのトライが比較的多かった。だから、そこをさらに磨く。強化する。加えて、日体大ならではの「スピード・ランニングラグビー」。ワイドに振っていく。そして、ディフェンス力も向上している。

 秋廣監督が笑いながら言葉を足した。

「アタックは、忍者アタックですね」

一緒に歩いていた日体大の長老OBがボソッとこぼした。

「ああ、昔の忍者ハットリくんか」

 3人の笑い声が高原の涼風にのった。

 

◆レギュラーの座をめざし、それぞれが奮闘

 

 8月18日の午後は、日体大の1年生主体のチームが東京外国語大学と対戦し、73-21で圧勝した。3トライを失ったのは反省材料か。東京外大の主将は試合後、スコアを聞いて「すごい。やったぞ~」と大喜びしていた。最後までひたむきな、いいチームだった。部員が20数名。その頑張りは感動的だった。

 

 8月19日午後、日体大は東京農大の挑戦を受け、21-12で退けた。レギュラー入りをめざすメンバー編成だったが、センター鈴木一平のパス、ラン、キック、スタンドオフの「マヌ」ことイマニエルの鋭利するどいラン、好判断、SH小川遥斗のボールさばき、ウイングのトニーの豪快なラン、1年生の大型FB、佐藤晟の猛タックル、1年生ナンバー8、千野太雅のタテ突破が光を放った。おっと、忘れてはいけない。「社長」こと1年生プロップ、中林勇希もスクラムでがんばった。

 

◆OB会が現役部員を激励

 

 8月19日は、日体大ラグビー部OBや保護者の姿もグラウンド周りにあった。ありがたいことである。練習の合間、OB会の激励式があり、村中宏行会長から「激励金」が萩原主将に手渡された。

 村中会長につづき、中濵聡緒幹事長、杉浦治事務局長が激励の言葉を述べられた。高く青い空の下、約90人のラグビー部員が整列し、耳を傾けている。

 しみじみと思う。日体大ラグビー部は1933年創部。その歴史は、その年その年、ラグビー部に関わった人々の営々たる努力の集積であり、流した汗の結晶なのだろう。彼らの火のごとき情熱があればこそ、その営みは90余年経った今も脈々と続いているのである。

 

◆今を全力で生きる

 

だからこそ。

現役部員は今を全力で生きる。

夏合宿に没頭する。同志と一緒に。

新たな歴史を刻むため。

今季の目標は、「全国大学選手権ベスト8」である。

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