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2024.09.23.

まっちゃん部長日記part10 @「早大戦。この完敗を糧に前を向く。次こそニッタイの意地を!」

 悔しくて。悔しくて。日本体育大学ラグビー部が早稲田大学と対戦。最後までひたむきなタックルをし続けたが、0-83で敗れた。13トライを許したが、こちらはノートライに終わった。ああユニコーンも泣いている。

 「完敗です」。試合後の記者会見。秋廣秀一監督はそう、声を絞り出した。

 「やりたいことが何もできませんでした。ニッタイとしては、ハイスピードランニングラグビーというテーマを掲げて挑んだんですけど、ワセダさんのはやいテンポに対応できず、完敗という結果になってしまいました」

 

 ◆幸せなステージで先制攻撃も、ハイスピードランニングラグビー不発。

 

 日曜の9月22日、東京・秩父宮ラグビー場。観客が4650人。全国各地からOB、保護者も駆け付けていた。空は曇天。雨上がりの緑の天然芝はよく手入れされている。ここで試合ができるというのは、大学ラガーにとっては幸せなことである。(とくに相手が我が母校の早大、感慨深いものがあった)

 午後零時半、早大ボールでキックオフ。正面スタンドからみて、日体大は風上の右から左に攻める。ハイパントを絡めた攻めと鋭いディフェンスでチャンスをつかんでの『ハイスピードランニングラグビー』、それがゲームプランだった。

 この日、初の公式戦先発となったウイング、「トニー」ことトアニトニ・キオタカがいきなり、188センチ、105キロのからだを生かしてガツンとぶちかます。その後のスクラムでは、相手のコラプシング(故意に崩す行為)の反則をもらった。ペナルティーキックをタッチに蹴りだし、相手陣の右ラインアウトからフランカー家登正旺がドンピシャでキャッチし、オープンに展開。またもトニーがまっすぐ縦に力強いアタックを見せた。

 いい流れだった。だが、ラックから出たボールをSH伏見永城がファンブル。チャンスの芽はついえた。

 

◆秋廣監督「セットプレー、ハンドリングミスが痛かった」

 

 ラグビーはやはりスクラムである。スクラム、ラインアウトのセットプレーである。生きたボールが出ないと、ハイスピードランニングラグビーも絵にかいたモチとなる。秋廣監督は「セットプレーもですけど、9番(SH)、10番(SO五味侑也)のハンドリングミスが痛かったです」と話した。指摘通り、相手の激しいプレッシャーにパスが乱れるのだった。

 序盤、早大に逆襲を許し、自陣深くのラインアウトから連続攻撃を食らった。日体大がいいディフェンスで止める。とくに川越大地、勝目龍馬の両CTBがナイスタックル!それでも、早大はボールをつなぎ、CTB福島秀法からのオフロードパスをもらったフランカー田中勇成に中央に飛び込まれた。

 これで早大は勢いづいた。日本代表のFB、矢崎由高ほか、将来の日本代表候補のSO服部亮太、CTB福島を擁するラインはスピードがあった。しかもワイドに外に展開してくる。日体大は個別には烈しいタックルを繰り返すのだが、セットプレーで優位に立ってバックスを縦横に走らせ、前半だけで大量7トライをマークした。

 

◆萩原主将「できたところもいくつかあった」

 

 やはり全国優勝を目指すチームとは総合力が違い過ぎた。1部に復帰したばかりの日体大が互角に戦えるほど、ラグビーは甘くはないのだろう。早大のフッカー佐藤健次主将が直前のケガで欠場しながらも、スクラムも一体感があった。鋭いヒットだった。

 日体大のフッカー、萩原一平主将は「帝京大戦から2週間、準備してきたアタック、ディフェンスのところで、できたところもいくつかあったんですけど」と漏らし、こう続けた。鼻の頭の裂傷の血が痛々しい。

 「ワセダのハイスピードアタックに対して、自分たちのアタックが対抗できませんでした。スクラムはイメージとしては、ヒットしたあと、うしろの重さが少ないかなということだったんですけど、プラス、フロントローも相手に付き合ったところもありました。スクラムのライブ(練習)の本数を増やして、いろんなタイプに合わせられるようにやっていきたいと思います」

 つまるところ、課題はバックファイブ(両ロック、両フランカー、ナンバー8)の圧力と8人の結束、ヒットスピードとタイミングということか。

 

◆テビタが雄叫び。速攻から連続攻撃を仕掛けるも。

 

 試合中、選手間の声が少ない印象を受けるが、日体大の闘志は衰えなかった。

 この日、一番のトライチャンスは、後半序盤、早大に1トライを加えられた後の数分間の日体大の一連のアタックだった。WTB原田来記が鋭利するどいランでゲインする。相手にターンオーバーされても、SH伏見が低いタックルで刺さり、ロックのテビタがジャッカル、PKをもぎとった。テビタが雄たけびをあげた。

 敵陣深く攻め込み、右ラインアウトからのアタック。ボールをこぼし、相手ボールのスクラムとなるも、コラプシングでPKを得ると、速攻を仕掛けた。タックルを受けるも、ラックサイドをロックの岸佑融が、プロップの中野佑晟が、ナンバー8の岡部義大が果敢についていく。

 FWをあて、そしてオープンに回す。ここでパスが乱れ、慌てたFB辰己一樹がノックオン。日体大は結局、トライラインを割ることができなかった。

 

◆MIP表彰のトニー「自信、ついた」

 

 萩原主将の言葉通り、「できたところ」はいくつもあった。

 地味ながらも、フランカー大竹智也、CTB勝目の猛タックル、SO五味侑也、FB辰己の好キック、押されながらもスクラムからのナンバー8岡部の鋭いサイドアタック、代わったプロップ吉田伊吹のスクラムでの踏ん張り、交代WTB甲斐倖ノ助の思い切りのいいラン、そしてトニーのハイパント&タックル。左肩を痛めながらも、あの早大の矢崎に猛タックルを浴びせもした。

 トニーは、この試合の「MIP(モスト・インプレッシブ・プレーヤー)」に選ばれた。最も印象を与えた選手。記念メダルを手に、トニーは試合後、笑った。

 「もっとボールをほしかった。ボールがくれば、ゲインできます。自信、ついた」

 

◆帝京大戦はフィジカルで、早大戦ではスピードで。収穫は「経験」

 

 日体大は初戦の帝京大戦はフィジカルで、この日の早大戦ではスピードでやられた。どちらもノートライ。

 秋廣監督は「帝京さんはフィジカルのチーム、ワセダさんはスピードのチーム、両校はタイプが違うんですけど、そこに対抗していかないと、(1部の)上の方には上がれないと感じた試合でした」

 収穫は?

 「経験です」

 湯浅直孝ヘッドコーチはこうだ。

 「どの年もこういうこと(完敗)があるんで。ここでどう切り替えるかが大事なんです。何が本当に悪かったのか。そこをまず、みんなに気づかせて、もう前を向いていくしかありません」

 

◆次は明大。何かでニッタイの意地を!

 

 夜、秩父宮ラグビー場近くの中華料理店でOB懇親会があった。みなさん、一様に悔しがっていた。でも、だれよりも選手が一番、悔しいに決まっている。試合後のロッカールームでは悔し涙を流す選手もいたようだ。

 次は、ショートウィーク。中5日で今度の相手は明大(28日・小田原)である。確かにチームの強化が一気に進むことはない。とくにセットプレーの修正は時間がかかる。

 でも、勝ち負けでなくとも、何かひとつにこだわってやっていくしかあるまい。タックルならタックル、キックならキック…。僕は叫びたい。

 何かでニッタイの意地を見せようぜ!

(松瀬学)

写真は、岸健司氏撮影

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