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2024.09.29.

まっちゃん部長日記part11 @「がんばれ!ニッタイ!―明大との100点ゲームをバネに」

 

 「がんばれ~! ニッタイ!」。山あいの小田原市城山陸上競技場。試合後、打ちひしがれた日本体育大ラグビー部の選手たちにスタンドから絶叫に近い男性の声が飛んだ。保護者か、日体大OBか。ありがたいことである。涙が出そうになった。

 

◆開幕3連敗。しかもノートライ。秋廣監督「ニッタイの意地を見せたい」

 

 28日の土曜日。小雨がぱらつく中、そのスタンドには657人(公式発表)の観客に来ていただいた。1部に復帰した日体大は強豪明大に挑み、0-101の「100点ゲーム」で惨敗した。大量15本のトライを奪われ、こちらはまたもノートライ。相手が帝京大、早大、そして明大と対抗戦Aグループ(1部)の上位校だったこともあろうが、開幕3連敗で、いまだトライを1本も取れてはいない。1本も…。

 もちろん試合に出た選手たちが誰よりも悔しいに決まっている。悔し泣きしている選手もいた。ショックは大きかろう。でも、シーズンはまだ続く。

 「非常につらい」。日体大の秋廣秀一監督は記者会見でそう、漏らした。ただ、まだシーズンは序盤である。前を向く。

 「これで落ち込むのではなく、あきらめるのではなく、ここからが勝負。大学選手権ベスト8を目指す。何としても、ニッタイの意地を見せたい」

 

◆ゲームプランは遂行されず

 

 毎試合、練習で修正して、試合に臨んできた。

 この日のゲームプランは、簡単にいえば、「キック、チェース、タックル」でボールを奪回し、テーマの「ハイスピードランニングラグビー」によるアタックだった。でも、そのプランは徹底されてはいなかった。

 例えば、前半中盤のワンシーンである。相手キックをトンガ出身の大型WTBの「トニー」ことトアニトニ・キオタカ(188センチ、105キロ)がキャッチした。まっすぐ相手に当たっていくか、大きなハイパントを蹴り上げていくかと思いきや、斜めに少し走って、相手ディフェンス裏にチップキックを蹴ってしまった。

 これを明大のFB金昴平が難なくキャッチし、逆襲に転じられてしまった。すぐに自陣に攻め込まれ、日体大の懸命のタックルにも、ついにはトライにつなげられてしまう。

 秋廣監督は嘆く。

 「プラン通りに進めることができませんでした。練習ではやってないことをやってしまう。あのシーンはもう、トニーがしっかりパントを上げて、敵陣に入るポイントだったでしょう。そういった意味では、自分たちが(プランを)信じられていない気がしますね」

 

◆「仕留める力」に大きな違い。ミスからピンチを招く

 

 試合は、相手ボールのキックオフから始まった。

 これをノックオン。相手ボールとされ、連続攻撃から、明大フランカーの大川虎拓郎に先制トライを献上した。

 明大はトライをとり切る力があった。ラグビーで大事な「仕留める力」である。しかも、こちらのミスを逃してはくれない。前半終了間際は、日体大陣ゴール前のバックスの緩い山なりのパスをインターセプトして、明大1年生のWTB白井瑛人が前半9本目のトライを挙げたのだった。

 

◆最大の課題はスクラム、ラインアウトのセットプレー

 

 日体大の最大の課題はセットプレーである。

 スクラムとラインアウト。ボールが確保できなければ、アタック時間も短くなる。トライチャンスも少なくなる。マイボールのスクラムは何とか工夫して、ダイレクトフッキングで出してはいるのだけれど、ラインアウトはなかなかボールを生かせない。

 問題はスローイングなのか、ジャンパーとのタイミングなのか、リフターなのか。いずれにしろ、練習不足なのだろう。せっかくゴール前に攻め込んでも、チャンスのラインアウトのボールを確保できないのでは苦しい。

 

◆MIP岸佑融「引っ張っていく人たちが軸にならないと」

 

 ただ、日体大選手に相手に挑みかかる気概は見えていた。一対一の一発目のタックルは悪くなかった。特に「タックルの鬼」のフランカー、大竹智也、FWリーダーのロック岸佑融、ナンバー8の岡部義大はからだを張り続けた。

 SH日髙柊とSOの「マヌ」ことラコマイソソ・イマニエルのゲームメイクも的確だった。でも、ブレイクダウンでこうやられては、攻めに勢いがつかない。

 地味ながらも、奮闘し続けたロックの岸は試合後、悔しさで顔をゆがめていた。ブレイクダウン、ジャッカルなどでもがんばり、試合の「モストインプレッシブプレーヤー」(MIP)に選ばれた。

 4年生の岸は涙声で途切れがちに話した。

 「3戦連続でやっぱり…。初戦から流れを変えられなかったというのが…。チームとしても、リーダーとしても…。ダメなところで…。結局は、やっぱり…。引っ張っていく人たちが機能して、チームの軸にならないと、下もついてきてくれないです。そこが…、足りてないんです」

 でも、シーズンも勝負もこれからなのだ。そう言えば、短く言い切った。

 「ゼッタイ、やります」

 

◆最後の意地の猛攻もトライラインには届かず

 

 ラスト3分。

 日体大は1トライにこだわり、猛攻を仕掛けた。

 敵陣深くのエリアにおいて明大ノックオンでマイボールのスクラムをもらった。ここで相手がペナルティー。不安定なラインアウトでなく、スクラム、速攻でもよかったけれど、ボールをタッチに蹴り出した。

 マイボールのラインアウト。途中交代出場のスローワー、フッカー新垣敬史がオーバーボールを放り、相手ボールとなった。焦った明大がインゴール内でボールを回す、交代出場のフランカー、家登正旺がこれをつぶし、敵陣ゴール前の5メートルスクラムに。

 ダイレクトフッキングでボールを出し、左へ展開。こちらが必死なら、明大防御も必死だった。ラックから、新垣が突っ込む。相手ペナルティー。PKから交替出場のSH伏見永城が速攻を仕掛ける。ゴールラインまであと数センチか。続けて、途中出場のプロップ由地蓮、ナンバー8岡部、ロック岸が突っ込む。でも、単発だからか、束となった明大タックルに阻まれ、ゴールラインにわずかに届かない。

 もういっちょ。プロップ由地が突っ込んだけれど、相手にボールを奪取されて、外に蹴り出されてしまった。悔しい幕切れ。悔しい、悔しいノーサイド。

 

◆萩原一平主将「自分たちがやりたいことができていない」

 

 萩原一平主将は悔しさを押し殺し、声を絞り出した。ポジティブさは失っていない。

 「相手のフィジカルの強さやディフェンスの厚さがあって、自分たちがやりたいことができていない。アタックの時間が圧倒的に少ないと思うので、これから、どう打開していくのか、を考えます」

 湯浅直孝ヘッドコーチはこうだ。

 「来週、ジュニア戦(立正大戦)があります。下の選手がチーム力を上げていくしかないと思うんです。まだ緩い、厳しくない。最後のところまでできるようにならないと試合にはならないんです。やれば、できるんです」

 次の対戦は、3週間空いて、10月20日(日)の筑波大となる。会場は、神奈川・大和SC。練習で修正する時間はある。

 要は、この日の悔しさを持続できるかどうか。屈辱と後悔を、苦悶と熟慮と鍛錬の先の勝利へと結ぶのか、である。

 

◆NZの日体大OGからも檄「前進あるのみ!」

 

 100点ゲームを食らった日は、やり場のない怒りで、朝まで一睡もできなかった。日曜の朝、どんよりした頭をひっさげて、パソコンを立ち上げると、ニュージーランド在住の日体大OGからメッセージが入っていた。こう、あった。

 <日体大男子、苦戦中のようですが、一歩一歩着実に前に進んでいることと思います。前進あるのみ! 応援続けていますよー!>

 がんばれ! ニッタイ! なのである。

 (筆:松瀬学、写真:森屋朋子さん提供)

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