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まっちゃん部長日記@ 「日体大、慶大に完敗。入れ替え戦で意地見せるゾ」
あぁ試練が続く。関東大学対抗戦Aグループ(1部)の日本体育大学はリーグ最終戦で慶大にノートライの0-50と完敗し、7戦全敗の最下位8位となった。14日のA・B(2部)入れ替え戦(熊谷・14時KO)でB1位の成蹊大と対戦する。
◆熊谷名物の「赤城おろし」は吹かず
12月1日の日曜、熊谷スポーツ文化公園ラグビー場。雲一つない日体カラーの青空がひろがる。これも地球温暖化の影響か、この時期名物の冷たくて痛い赤城おろしの強風はほとんど、ない。それでも日体大はコイントスで勝ち、太陽の陽射しを背にする風上のサイドを選んだ。
主将のフッカー、萩原一平の述懐。
「熊谷は風が強いということで、その対策ばかりをしてきたんですが、グラウンドに立ってみると、そこまで風は吹いていない状況でした。対応がちょっと戸惑うところがありました」
◆悔しいノートライ
キックオフ直前、メインスタンドの上段の左側には日体大のノンメンバーが陣取っていた。「イケ~、ニッタイ!」「ニッタイ、ニッタイ、ニッタイダイ!」。大きな声が寒風に乗った。仲間の声援を背に受け、グラウンドの日体選手たちはからだを張った。
とくにゴールライン前のディフェンス。攻め込まれても、執拗なタックルでタイガージャージの前進を阻む。ナンバー8の岡部義大、フランカーの大竹智也、家登正旺が相手に突き刺さる。倒れてはすぐに立ち上がり、またタックルに回った。
ブレイクダウンでも奮闘。家登がジャッカルに入り、相手の反則をもぎとる。ゴール前のピンチでは萩原主将もジャッカルにうまく入り、相手反則を誘った。ただ、アタックでは、要所で、慶大の強いプレッシャーにハンドリングミスが続発した。ゴール前でラインアウトをもらっても、そのモールをつぶされた。
なんというか、トライのにおいがしないのだ。秋廣秀一監督はこう、嘆いた。
「勝負所でトライをとり切れない。決定力が不足して、こういう結果(ノートライ)になってしまいました」
◆前半終了間際に痛恨の失トライ
肝心のスクラムでも後手を踏んだ。鋭い慶大の当たりに押し込まれ、ズルズルと後退していく。前半中盤、不運にも左プロップの築城峻太が負傷退場する。プロップ有田睦が代わって入ったが、その直後のゴール前スクラムを押し込まれてスクラムトライを献上した。
あえて勝負のアヤを探せば、またも前半終了間際の失トライだろう。
慶大の猛攻を懸命のタックルでしのいでいたが、一連のディフェンスの際、左プロップの有田とセンター嘉藤匠悟が首筋あたりを打ってグラウンドに倒れた。有田はがんばってプレーを続行、嘉藤は交代となり、1年生の渡邉僚太がセンターに入った。
ディフェンスラインの連携は難しい。前半のロスタイム。中盤の相手ボールのスクラムを押し込まれ、慶大はサインプレーを仕掛けてきた。SHからCTBを日体SOの五味侑也の内側に鋭く切り込ませ、約50メートルを走り切り、中央にトライした。
ゴールも決められ、これで0-14となった。
後半、日体大はディフェンスでは粘った。序盤のゴール前ピンチ。慶大の怒とうの攻めをフランカー大竹やナンバー8岡部、ロック岸佑融らの束となったタックルでしのぐ。見ていて、こちらの胸も熱くなった。
相手の反則をつかみ、SH伏見永城が速攻を仕掛けて、敵陣深くに好キックを蹴り込んだ。ボールは相手ゴールライン前まで転がったけれど、相手の戻りがはやく、トライにはつながらなかった。
スクラムのジャッジは難儀である。どうしても押し込まれている方が反則をとられてしまう。後半15分、スクラムのコラプシング(故意に崩す行為)のペナルティーを鈴木賢レフリーに吹かれ、有田が反則の繰り返しでイエローカードをもらった。これは痛かった。
慶大にPKを蹴り出され、そのラインアウトを押し込まれて、追加のトライを与えてしまった。これで0-22。勝敗の帰趨はほぼ決まった。
◆まさかのダブルモーション「一平さ~ん、がんばれ~」
えっと驚くようなレフリーの笛もあった。敵陣深いラインアウトでは、スローワーの萩原主将がダブルモーションの反則を吹かれてしまった。珍しい(録画ビデオで何度も確認したけれど、あんな微妙な動きを反則にされるとは)。よほど悔しかったのだろう、萩原主将はヘッドキャップをグラウンドの外の枯芝に投げつけた。
スタンドからファンの大声が響いた。
「一平さ~ん、がんばれ~」
流れは変わらなかった。
ラスト10分でさらに4トライを許した。
秋廣監督は「とれるところでとれない」とため息をついた。
「敵陣に入れば、ペナルティーを犯す。ペナルティーからタッチに蹴り出してほしいのに、キックミスでノータッチになってしまう。大事なところでミスをする。なぜなのか」
この2週間、アタックの引き出しを増やそうと心掛けてきた。
「でも」と、湯浅直孝ヘッドコーチは言った。
「自分たちが想定していた以上のプレッシャーもあったのでしょう、その引き出しをうまく試合に出せませんでした。それで、相手のリズムになってしまったようです」
◆「生きるか死ぬか」の入れ替え戦、チーム一丸で必勝あるのみ
ことしのラストゲームは入れ替え戦である。
試合後、ロッカー室から出てきた湯浅HCは言葉に力をこめた。
「もう学生たちも切り替えていると思います。とにかく、成蹊大に勝つ。4年生、上級生を中心に、今年の締めくくりと、来年の対抗戦を見据えて、まとまってやっていくしかありません」
萩原主将はこうだ。
「自分自身を含め、去年、2部でやってきて、ずいぶん、つらい思いをしました。個人としても、ラグビースキルの成長にもかかわってくるので、やっぱり後輩たちにそんな(2部シーズンの)思いはさせたくない。4年生で一丸となって勝ちにいきます」
もちろん、下級生だって、思いは同じだろう。攻守に活躍し、試合の「モスト・インプレッシブ・プレーヤー」に輝いた2年生、ナンバー8の岡部は声を絞り出した。「まだまだ」と。好タックラーの勲章だろう、左の甲にはタックルあとの黒褐色の分厚いかさぶた。
「成蹊大学に向けて僕らがやることは、絶対に勝ち切るということ。絶対に、絶対に勝ち切って、また来年、イチから(全国大学)選手権にいけるチーム作りに貢献できる選手になりたい」
秋廣監督も短く言った。
「意地でも勝つゾ」
いざ、「生きるか死ぬか」の入れ替え戦だ。
僕は、心で叫んだ。
もう魂の勝負だ。負けてたまるか、コンチキショウ。
がんばれ! がんばれ! ニッタイダイ!
(筆:松瀬学、写真:岸健司氏)