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2025.06.16.

まっちゃん部長日記④『日体大が立大に大敗「もう、やるしかない」』

 ああレ・ミゼラブル(無情)である。関東大学ラグビー春季交流大会最終日。Cグループの日本体育大学は立教大に12-66で大敗した。2勝3敗で大会を終え、秋本番に向けて課題が山積となった。

 「ニッタイダイ! ニッタイダイ!」。日曜の15日。蒸し暑い横浜・健志台キャンパスのラグビー場。ノーサイド寸前、この日、10本目のトライを立大に奪われると、スタンドから子どもたちの絶叫に似た掛け声が飛び交った。懸命の手拍子も鳴る。

 「流れ、持ってこい!」

 「ニッタイダイ! ニッタイダイ!」

 「タックル、タックル! トライだ、ニッタイダイ!」

 声の主は、地元のグリーンクラブラグビースクールのちびっ子ラガーたちだった。ざっと百人。スクールの練習を終え、日体大の応援に駆けつけてくれたのだった。もうありがたくて、申し訳なくて。

 この日は父の日。不甲斐ない日体大は、部員の父親やちびっ子たちの声援に応えることができなかった。12-66でノーサイド。試合が終わると、雨が突然、降り出した。

 

 ◆チームとしてのまとまり欠く。秋廣監督「連携がとれていない」

 

 そりゃ、大野莉駒主将や4年生の主力組が教育実習で不在だったこともある。けが人もいた。それにしても、である。立大は秋の関東大学対抗戦Aグループ(1部)でぶつかる相手。個々は戦う気概を見せながらも、チームとしてのまとまりを欠いた。

 やはりラグビーという競技は『ONE FOR ALL、ALL FOR ONE』であろう。一体感が希薄であれば、まず相手を凌駕することはできない。

 試合後、秋廣秀一監督は顔をゆがめ、吐息を漏らした。

 「何をやっていいのかわからない状況でしたね。攻めては単調、守ってはバラバラ。考えない練習をし過ぎてきたのか、自分たちでその時、その時の状況に対応できていない。声も出なくて。言われたことだけしかやらない、ロボットみたいな人間になってしまっていました。コミュニケーションがとれていない。連係がとれていませんでした」

 雨空を見上げ、首をひねる。

 「まあ、そんな練習を指導してきた僕らの責任でしょうけど」

 

 SH原田、40㍍疾走の逆転トライ。でも前半ラスト5分で3失トライ

 

 立ち上がりは悪くなかった。

 この2週間、練習ではディフェンスにフォーカスしてきた。

 ラインスピードを意識して、しっかりラインで前に出て、相手を前で止める。ブレイクダウンでも前に出る。CTB川越大地、WTB廣建進らのタックルが決まった。

 前半10分、相手FWに力で先制トライをとられたが、すかさず反撃に転じた。3分後、敵陣ゴール前でペナルティーキックを得ると、スクラムを選択し、FWが密集サイドを突いた。最後は久しぶりに戦列復帰したトンガ人留学生のロックのテビタ・タラキハアモアがラックの右サイドを攻めてトライを返した。

 さらにSH原田來紀らがナイスタックルを見せた。タックルが決まれば、動きにリズムが生まれる。前半28分、SH原田がスクラムからサイドを走り、ステップを交えながら、約40メートルを走り切った。SO五味侑也のコンバージョンキックも決まり、12-7と逆転した。

 その後、接点ではよく戦っていた。ゲーム主将を務めた3年生のナンバー8岡部義大、2年生のフランカー千野太雅のコクトチ(栃木・國學院栃木高)コンビがスティール(旧ジャッカル)を決めて、PKをもらった。敵陣でチャンスをつくった。

 だが、前半のラスト5分、ディフェンスのラインスピードが鈍り、タックルも甘くなったところを突かれ、立大の看板の俊足バックスに3連続トライを奪われた。12-24でハーフタイムを折り返した。

 

 ◆ラインディフェンス崩壊。フィットネス不足。

 

 後半、ラインディフェンスが崩壊し、立大に6トライをさらに献上した。

 湯浅直孝ヘッドコーチは「前半の30分間が80分間続かないといけない」と悔やんだ。

 「体力に問題があるのかもしれません。やろうとしていることが出せませんでした。なぜかと言うと、状況が変わった時のオプションに対応できないので、全部、後手、後手に回ってしまいました。状況が変わった時、だれが声を出すのか、プレーオプションをチョイスしていくのか、アタックに関してそれができませんでした」

 ディフェンスは。

 「後半のディフェンスのところでは、こちらのラインスピードがばらばらになってしまって、相手に好きなようにパスを回されてしまいました」

 チームは全員が主体的に動いてこそ、活気づく。でも、この日は、全員が他人のコールを待っているような印象だった。

 「コミュニケーションの質をもっと上げていかないといけないでしょ」

 

 ◆ゲーム主将の岡部「シンプルにペナルティーが多い」

 

 ゲーム主将の岡部は雨に濡れて、打ちひしがれていた。

 スクラムからのサイド攻撃やスティール、タックルでいぶし銀の光は放ったけれど、チームを勝利にリードすることはできなかった。

 「つらかった?」と聞けば、岡部は「そうですね」と声を落とした。

 「ディフェンスの時間が長くて、なかなか敵陣にいけませんでした。常に自陣でラグビーをやっていたので。ラグビーは敵陣にいかないとスコアもできません。これだけスコアで大差を付けられると、冷静さを失うし、もう考えられなくなります」

 苦しい展開はなぜ?

 「シンプルにペナルティーが多いのと、ブレイクダウンが安定していなかったので…。エリアをとりたくても、プレッシャーを受けて、キッカーがうまく蹴れませんでした。パントを蹴っても、チェイスがばらばらで…。ブレイクダウンもセカンドマンが遅かったですね」

 ブレイクダウンで二人目の寄りが遅いと、どうしても孤立してペナルティーを献上してしまうことになる。チェイスがしっかりとラインじゃないと、走力ある立大バックスにはどんどん走られてしまった。

 岡部は言い切った。

 「チーム力をもっと上げないといけません」

 

 ◆収穫は、1年生の公式戦経験。加藤「自分のプレーはできなかった」

 

 あえて収穫を探せば、1年生の公式戦経験か。

 フランカー加藤成悟(栃木・國學院栃木)ほか、SH井上旬(大分・大分舞鶴高)、ロック西田櫂(神奈川・桐蔭学園高) CTB木村航(京都・京都工学院高)、 フランカー土井天満(大分・玖珠美山高)の5人が紺色と水色のダンガラ(段柄)ジャージを着て溌剌とプレーした。秋廣監督も「みんな、頑張ってくれました」とほめた。

 期待の加藤は後半20分に交代出場。防戦一方の展開ながら、持ち味のタックルで地味に健闘した。本人は「自分の思ったようなプレーができませんでした」と反省しきりだ。

 「もっと練習して、からだもでかくして、また試合のメンバーに選んでもらえるように頑張りたいと思います」

 公式戦のあと、1年生主体のチームが立大と40分ハーフの練習試合を実施。これは日体大が19-17で勝利を収めてくれた。

 

 ◆課題は組織力。グリーンラグビースクールには感謝

 

 春の公式戦では、成蹊大、日大に快勝したが、中大、関東学院大、立大には敗れた。中大戦からは4年生の主力組が不在となって苦しい布陣となったこともあるが、要は組織力が足りないので、個人の力が通用しない相手となると苦しくなる。

 もちろん、勝って反省が理想だが、人間やチームは、いつかは負ける。場合によっては、しょっちゅう負ける。そこで、どうするかが、大事なのだ。

 敗北を隣人とする負け犬と化すか。それとも、この屈辱と後悔を、苦悶と鍛錬の先の栄光へと結ぶのか。春シーズンはまだ時間が残っている。菅平の夏合宿もある。

 負けて学ぶるかどうかが、いま、問われている。

 

 最後、湯浅HCは短い言葉に力を込めた。

 「もう、やるしかない」

 勝負の秋シーズンへ。結局のところ、指導陣の情熱と、部員の努力だろう。もうみんな、やるしかない、のである。(筆:松瀬学、写真:善場教喜さん)

 

【追伸】

グリーンクラブラグビースクールの子どもたち、あつい応援、ありがとう。とても、うれしいものでした。勝利を見せることができず、ごめんなさい。また同クラブからは、合宿所のリノベーション工事のためのご寄付をいただきました。ありがたいことです。物心両面でのご支援、誠にありがとうございます。

 

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