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まっちゃん部長日記④『日体大が立大に大敗「もう、やるしかない」』
ああレ・ミゼラブル(無情)である。関東大学ラグビー春季交流大会最終日。Cグループの日本体育大学は立教大に12-66で大敗した。2勝3敗で大会を終え、秋本番に向けて課題が山積となった。
「ニッタイダイ! ニッタイダイ!」。日曜の15日。蒸し暑い横浜・健志台キャンパスのラグビー場。ノーサイド寸前、この日、10本目のトライを立大に奪われると、スタンドから子どもたちの絶叫に似た掛け声が飛び交った。懸命の手拍子も鳴る。
「流れ、持ってこい!」
「ニッタイダイ! ニッタイダイ!」
「タックル、タックル! トライだ、ニッタイダイ!」
声の主は、地元のグリーンクラブラグビースクールのちびっ子ラガーたちだった。ざっと百人。スクールの練習を終え、日体大の応援に駆けつけてくれたのだった。もうありがたくて、申し訳なくて。
この日は父の日。不甲斐ない日体大は、部員の父親やちびっ子たちの声援に応えることができなかった。12-66でノーサイド。試合が終わると、雨が突然、降り出した。
◆チームとしてのまとまり欠く。秋廣監督「連携がとれていない」
そりゃ、大野莉駒主将や4年生の主力組が教育実習で不在だったこともある。けが人もいた。それにしても、である。立大は秋の関東大学対抗戦Aグループ(1部)でぶつかる相手。個々は戦う気概を見せながらも、チームとしてのまとまりを欠いた。
やはりラグビーという競技は『ONE FOR ALL、ALL FOR ONE』であろう。一体感が希薄であれば、まず相手を凌駕することはできない。
試合後、秋廣秀一監督は顔をゆがめ、吐息を漏らした。
「何をやっていいのかわからない状況でしたね。攻めては単調、守ってはバラバラ。考えない練習をし過ぎてきたのか、自分たちでその時、その時の状況に対応できていない。声も出なくて。言われたことだけしかやらない、ロボットみたいな人間になってしまっていました。コミュニケーションがとれていない。連係がとれていませんでした」
雨空を見上げ、首をひねる。
「まあ、そんな練習を指導してきた僕らの責任でしょうけど」
◆SH原田、40㍍疾走の逆転トライ。でも前半ラスト5分で3失トライ
立ち上がりは悪くなかった。
この2週間、練習ではディフェンスにフォーカスしてきた。
ラインスピードを意識して、しっかりラインで前に出て、相手を前で止める。ブレイクダウンでも前に出る。CTB川越大地、WTB廣建進らのタックルが決まった。
前半10分、相手FWに力で先制トライをとられたが、すかさず反撃に転じた。3分後、敵陣ゴール前でペナルティーキックを得ると、スクラムを選択し、FWが密集サイドを突いた。最後は久しぶりに戦列復帰したトンガ人留学生のロックのテビタ・タラキハアモアがラックの右サイドを攻めてトライを返した。
さらにSH原田來紀らがナイスタックルを見せた。タックルが決まれば、動きにリズムが生まれる。前半28分、SH原田がスクラムからサイドを走り、ステップを交えながら、約40メートルを走り切った。SO五味侑也のコンバージョンキックも決まり、12-7と逆転した。
その後、接点ではよく戦っていた。ゲーム主将を務めた3年生のナンバー8岡部義大、2年生のフランカー千野太雅のコクトチ(栃木・國學院栃木高)コンビがスティール(旧ジャッカル)を決めて、PKをもらった。敵陣でチャンスをつくった。
だが、前半のラスト5分、ディフェンスのラインスピードが鈍り、タックルも甘くなったところを突かれ、立大の看板の俊足バックスに3連続トライを奪われた。12-24でハーフタイムを折り返した。
◆ラインディフェンス崩壊。フィットネス不足。
後半、ラインディフェンスが崩壊し、立大に6トライをさらに献上した。
湯浅直孝ヘッドコーチは「前半の30分間が80分間続かないといけない」と悔やんだ。
「体力に問題があるのかもしれません。やろうとしていることが出せませんでした。なぜかと言うと、状況が変わった時のオプションに対応できないので、全部、後手、後手に回ってしまいました。状況が変わった時、だれが声を出すのか、プレーオプションをチョイスしていくのか、アタックに関してそれができませんでした」
ディフェンスは。
「後半のディフェンスのところでは、こちらのラインスピードがばらばらになってしまって、相手に好きなようにパスを回されてしまいました」
チームは全員が主体的に動いてこそ、活気づく。でも、この日は、全員が他人のコールを待っているような印象だった。
「コミュニケーションの質をもっと上げていかないといけないでしょ」
◆ゲーム主将の岡部「シンプルにペナルティーが多い」
ゲーム主将の岡部は雨に濡れて、打ちひしがれていた。
スクラムからのサイド攻撃やスティール、タックルでいぶし銀の光は放ったけれど、チームを勝利にリードすることはできなかった。
「つらかった?」と聞けば、岡部は「そうですね」と声を落とした。
「ディフェンスの時間が長くて、なかなか敵陣にいけませんでした。常に自陣でラグビーをやっていたので。ラグビーは敵陣にいかないとスコアもできません。これだけスコアで大差を付けられると、冷静さを失うし、もう考えられなくなります」
苦しい展開はなぜ?
「シンプルにペナルティーが多いのと、ブレイクダウンが安定していなかったので…。エリアをとりたくても、プレッシャーを受けて、キッカーがうまく蹴れませんでした。パントを蹴っても、チェイスがばらばらで…。ブレイクダウンもセカンドマンが遅かったですね」
ブレイクダウンで二人目の寄りが遅いと、どうしても孤立してペナルティーを献上してしまうことになる。チェイスがしっかりとラインじゃないと、走力ある立大バックスにはどんどん走られてしまった。
岡部は言い切った。
「チーム力をもっと上げないといけません」
◆収穫は、1年生の公式戦経験。加藤「自分のプレーはできなかった」
あえて収穫を探せば、1年生の公式戦経験か。
フランカー加藤成悟(栃木・國學院栃木)ほか、SH井上旬(大分・大分舞鶴高)、ロック西田櫂(神奈川・桐蔭学園高) CTB木村航(京都・京都工学院高)、 フランカー土井天満(大分・玖珠美山高)の5人が紺色と水色のダンガラ(段柄)ジャージを着て溌剌とプレーした。秋廣監督も「みんな、頑張ってくれました」とほめた。
期待の加藤は後半20分に交代出場。防戦一方の展開ながら、持ち味のタックルで地味に健闘した。本人は「自分の思ったようなプレーができませんでした」と反省しきりだ。
「もっと練習して、からだもでかくして、また試合のメンバーに選んでもらえるように頑張りたいと思います」
公式戦のあと、1年生主体のチームが立大と40分ハーフの練習試合を実施。これは日体大が19-17で勝利を収めてくれた。
◆課題は組織力。グリーンラグビースクールには感謝
春の公式戦では、成蹊大、日大に快勝したが、中大、関東学院大、立大には敗れた。中大戦からは4年生の主力組が不在となって苦しい布陣となったこともあるが、要は組織力が足りないので、個人の力が通用しない相手となると苦しくなる。
もちろん、勝って反省が理想だが、人間やチームは、いつかは負ける。場合によっては、しょっちゅう負ける。そこで、どうするかが、大事なのだ。
敗北を隣人とする負け犬と化すか。それとも、この屈辱と後悔を、苦悶と鍛錬の先の栄光へと結ぶのか。春シーズンはまだ時間が残っている。菅平の夏合宿もある。
負けて学ぶるかどうかが、いま、問われている。
最後、湯浅HCは短い言葉に力を込めた。
「もう、やるしかない」
勝負の秋シーズンへ。結局のところ、指導陣の情熱と、部員の努力だろう。もうみんな、やるしかない、のである。(筆:松瀬学、写真:善場教喜さん)
【追伸】
グリーンクラブラグビースクールの子どもたち、あつい応援、ありがとう。とても、うれしいものでした。勝利を見せることができず、ごめんなさい。また同クラブからは、合宿所のリノベーション工事のためのご寄付をいただきました。ありがたいことです。物心両面でのご支援、誠にありがとうございます。
ゲームキャプテン
3年 FL 岡部義大3年 FL 家登正旺 2年 PR 中林勇希 2年 FB 大久保陽斗 3年 SH 原田来紀 2年 FL 千野太雅 3年 LO 石塚翔真 3年 WTB 廣建進