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まっちゃん部長日記@世界一のレスリング部と合同練習 平和をかみしめて
戦後80年の終戦記念日の8月15日、日本体育大学ラグビー部は世界トップクラスのレスリング部との合同練習に挑戦した。平和のありがたみをかみしめながら。
日体大は痛切な歴史を有する。同日付の朝日新聞によると、1937年に始まった日中戦争以降、在校生、卒業生を合わせ、約1千人が出征し、400人弱が帰らぬ人となったと伝わる。
だからこそ、いまの学生は平和を希求し、スポーツに打ち込める環境に感謝しなければならないのだった。
◆世界トップクラスの練習に触れる
ご承知の通り、日体大レスリング部は国内屈指の強さを誇る。昨年のパリ五輪では在校生、卒業生が5つもの金メダルを獲得した。9月にある世界選手権(クロアチア・ザグレブ)に出場する日本代表選手は、男女30人のうち11人を占める。なぜ強いのか。他大学と何が違うのか。レスリング部の松本慎吾監督は「世界を身近に感じられる意識の差」ゆえと説明する。
ならば、大学選手権出場をめざすラグビー部も、その練習の意識に触れてみたい。17日からの菅平の夏合宿直前、松本監督のありがたい互助精神により実現した。
◆レスリング部丸山コーチ「おい、妥協するな!」
午前9時。日本レスリング協会の業務で不在だった松本監督に代わり、レスリング部の藤山光太朗コーチ、丸山千恵蔵コーチが指導してくれた。ざっと1時間半、柔軟体操から始まり、基礎的なマット運動や、2人組、3人組で身体的負荷をかけたり、ステップを踏んだり、連続ブリッジ、腕立て伏せ、ツイスト、足上げ腹筋…。
レスリング場の室温が30数度。見る間にマットには汗のたまりがあちこちにでき、その都度、モップで忙しくふき取っていく。
「もうムリ!」
「これ、やばい」
「めちゃ、きつ~」
「ウギャ~!」
まさに阿鼻叫喚(あびきゅうかん)。ラグビー部員からは意味不明の叫び声が飛び出す。マットにへたばり、ゼエゼエ、息を吐く者。もんどりうって倒れる者。
丸山コーチの叱咤が飛ぶ。
「おいッ。妥協するな!」
「あご上げて」
◆レスリング部藤山コーチ「きつい練習を一生懸命やっているだけ」
もう、レスリング部には感謝しかない。練習後、藤山コーチにお礼を言えば、笑顔でこう、おっしゃった。
「今日やったことで、何かラグビー部にプラスになってくれたらいいなと思います。日体大レスリング部は確かに結果が出ていますけれど、特別なことをやっているわけではありません。ただ、純粋に意識を高く持って、きつい練習を一生懸命にやっているだけです」
そう謙遜し、ラグビー部にエールを送っていただいた。
「対抗戦グループは強豪チームばかりなので、勝つのはなかなかむつかしいとは思います。でも、越えられない壁はないと思います」
◆秋廣監督「ラグビー部も全員、“自分らもやれるぞ”と感じた」
ラグビー部の秋廣秀一監督も感謝しきりだった。感想を聞けば、「夏合宿やシーズン前に世界一のレスリング部と練習をして、言われたことが心に響きました」と漏らした。
「“すべては妥協しない、一つ一つの動作を正確にやっているだけです”と。その言葉を聞いて、ラグビー部も全員が自分らもやれるぞ!と感じた合同練習でした」
大野莉駒主将はこうだ。
「夏合宿から、自分に妥協しないよう、きつい練習に取り組んでいきたい」
◆心技體
たった1日の合同練習でフィジカルやスピード、スキルが変わるはずはない。でも、練習の意識付けは変わる。レスリング場の壁には大きな書道紙の額が飾られている。黒い墨字でこう描かれていた。
「心技體」
(松瀬学)