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2025.08.27.

まっちゃん部長日記@『鍛錬の夏合宿―チーム一丸で「ガンバレ! 日体大」』

 鍛錬の夏合宿である。長野県の菅平高原。練習最終日の8月26日。朝6時、大野莉駒キャプテンらけが人10数人が、菅平のシンボル、ダボスの丘に向けて走り出した。強烈な日差し、心地よい高原の涼風、小鳥のさえずり、キレイな高原植物。

 標高が1500メートルほどか。ダボスの丘の急斜面は息が切れる。遠くを見れば疲れる。人生と同様、足元を見ながら一歩一歩、踏みしめていくしかない。着実に。

 てっぺんに到着すれば、立正大学のラグビー部員たちも登ってきていた。前日25日には早大の連中が大学日本一の時に歌う『荒ぶる』を大声で歌っていた。どこぞのチームもダボスのてっぺんでチームの「一体感」と「覚悟」を確認することになる。

 大野主将はぽつりと漏らした。

 「ひとりではなく、みんなで(ダボスの丘を)登るのは意味がありますね」

 

 ◆岡部ゲーム主将「チャレンジするぞ!」

 

 日体大Aの合宿最後の試合が、関西リーグのBグループ(2部)の大阪体育大学Aとの試合だった。菅平高原のメインラグビー場、「サニアパーク」のBグラウンド。2年前は日体大が勝ち、昨年は日体大が大体大に屈していた。東西の体育系大学同士とあって、互いにライバル心が芽生える。

 「チャレンジするぞ!」。試合直前、ゲームキャプテンを務める3年生のフランカー岡部義大が円陣で声を張り上げた。メンバーの気力充実。立ち上がり、紺色ヘッドキャップの岡部が勢いよく、相手キックをチャージする。

 マイボールのスクラムから、ナンバー8の中川内優太が持ち出し、FWがタテを突く。ラックの左、ラックの左、またラックの左。そして、最後はロックのテビタが大きなからだを生かしてポスト左にトライした。ゴールキックも決まり、7-0と先制した。

 テビタは直後、足を痛めて途中退場。元気者の石塚翔真が交代出場。

 

 ◆前半は、日体大FWが奮闘し、大量リード。

 

 FWが頑張った。「社長」こと左プロップの中林勇希、フッカー内山怜、右プロップ吉田伊吹のフロントローが強烈なパックでスクラムを押す。スクラムで優位に立てば、チームにリズムが生まれる。前半20分、ラインアウトでロック石塚が好捕し、モールをごりごり押し込んでFWがトライ、その5分後にはスクラムでコラプシングを奪ったまま攻め込んで、右オープンに展開、最後は原田来紀が中央に飛び込んだ。

 さらにCTB鈴木一平らがナイス・タックル! 前に出るディフェンスは効いていた。SO石谷陸翔のキックを織り交ぜたゲームメイクも冴えた。前半35分、相手ボールのスクラムでコラプシングを奪い、左にスピーディにつないで、FB五味侑也がど真ん中に飛び込んだ。前半を28-7の大量リードで折り返した。

 

◆後半はスクラム劣勢に。キック処理、規律が乱れる。

 

 後半、左プロップに築城峻汰、フッカーには山本慧、右プロップには由地蓮に入れ代わった。相手チームとの相性か、スクラムで劣勢に回った。コラプシングをとられる。さらにロングキックを蹴られると、キック処理にもたつき、エリア取りでも後手を踏んだ。規律も乱れる。流れは大体大に渡り、後半32分、とうとう同点に追いつかれた。ここからが本当の勝負だ。

 そういえば、試合前、大体大の長崎正巳GM兼監督と話をすれば、この夏合宿、チームビルディングをメインにしてきたと教えてくれた。つまり、チームの一体感醸成。昨季、関西リーグの入替戦で大体大は関西大学にロスタイムで18―19と逆転される劇的な敗戦を喫していた。最後は部全体の結束力が出ると反省したそうだ。

 

◆ロスタイムに決勝トライを許す。チームのまとまり、熱量の差。

 

 残り10分、グラウンド周りの大体大のノンメンバーの熱量は高かった。グラウンドの選手と一緒になって戦っていた。ラグビーで一番大事なものだと思う。

 大体大は反則を立て続けにもらって、エリアをとっていく。ロスタイム。左オープンへのキックパスが通り、決勝トライを奪った。「ヨッシャ―!」。ノンメンバーたちは歓喜を爆発させていた。

 35-42でノーサイド。21点差をひっくり返されるとは。対照的に日体大サイドは意気消沈である。選手たちは呆然とした顔でテントの下でへたり込んでいた。

 後半途中で交代していた岡部ゲームキャプテンは「スキルや身体能力とかは劣っていない相手なのになぜ、勝ち切れないのか」と悔しがった。こう続けた。正直だ。

 「チーム全体のまとまりとか、チーム一丸とかが、大体大さんの方が、最後、まさっていたのかなと思います」

 Aマッチに続いて行われたBマッチでも、日体大は8-26で大体大に敗れた。

 

◆最後に勝ち切れないのはなぜなのか。

 

 さて夏合宿はどうだったのか。真っ黒に日焼けした岡部は顔をゆがめ、こう話した。

 「結局、中京大との試合(●31-33)とかも、最後に勝ち切れない。最後の最後に勝ち切れないのは、チームの雰囲気とか、試合へのみんなの意識とかから、出てくるのかもしれません。もちろん、スキルや戦術は大事です。これから伸ばしていくんですが、もう一回、ここでチーム一丸となって、それぞれがチームのために何ができるのかを考えてプレーしないと勝負には勝てないなと実感しました」

 

 ◆花道は出場メンバーへのリスペクトとチーム一丸

 

 実は前日25日、山梨学院大C戦(〇80-12)の試合後、秋廣秀一監督が珍しくカミナリを落とした。「いろんなチームを指導してきて27年、今日の日体大の雰囲気は最悪だった。花道はいらねえよ」と。

 試合前にノンメンバーが「花道」をつくる。そのメンバーがふざけあっている。笑っている。テント下ではスマホを扱っている。チーム全体として緊張感は弛緩していた。そう、見えたのだろう。

 夜の食事の前、僕は花道の意味、歴史を部員たちに説明した。なぜ、花道を作るのか。加えて、なぜ、つらいラグビーをするのかも考えてほしいとも。

 花道は、ラグビーの母国、イングランドの試合前後の『Guard of Honor(ガード・オブ・オナー)』という儀式から来ている。出場できないメンバーが出場メンバーをリスペクトし、「がんばれよ」と拍手を送る、いわばチーム全員で戦うとの意思表示である。

 また日本では、出陣の儀式の意味も加えることもある。命がけで戦う出場メンバーに対し、「任せたぞ」と出場できないメンバーが拍手で送り出すのである。だから、花道で笑ったり、ふざけたりすることなどありえないのだった。

 チーム全体の戦う意志や規律、緊張感は必ず、スポーツの試合結果に表れると僕は思っている。とくにラグビーでは。

 

 ◆秋廣監督「前半の入りはよかったけれど…」

 

 大体大戦に戻る。

 秋廣監督は、「前半の入りはよかったんですが」と言った。

 「でも、後半はFW戦、とくにスクラムでやられました。前半はスクラムがよかったんで、勝ちたかったんですが。この試合はセレクションでもあったので、選手の力の差がわかりました」

 夏合宿の総括を。

 「終盤になってチームがまとまってきたんですけど、選手の力の差が浮き彫りにもなりました。フォワードはある程度、強化できました。ただバックスのキック処理だったり、フィールディングだったりがもたついて、自陣に攻め込まれ、敵陣になかなかいけない展開が多かったと思います」

 FWだけでなく、前に出るディフェンスもよくなっている。課題と収穫を見極め、大事なことは、今季はどこを武器に戦っていくのか、である。

 

 ◆無限の感謝と必勝の決意

 

 それにしても、保護者の部員たちの愛情の深いこと深いこと。合宿中に上田で開かれた保護者の親睦会には全国各地から約60名が駆け付けてきた。僕も招かれ、参加した。菅平の練習にも子どもたちの応援にやってきた。差し入れも多々、あった。

 大体大戦には、昨年限りで辞めた渡邊徹コーチ(現・山梨学院大コーチ)の母親もカメラを持って、日体大の応援に駆け付けた。

 部員たちはシアワセものである。僕は、強いチームには「無限の感謝と必勝の決意」が必要だと考えている。

 

◆シーズン開幕戦は9月13日。大学選手権出場を懸けて。

 

 いざ、シーズン開幕へ。

 日体大の開幕戦は9月13日、札幌である。相手が早大。

 そりゃ、チーム力は早大が上だろう。でも、だからこそ、ワクワクする。チャレンジできる。最後に岡部はこう、言った。

「チーム一丸となって、爪痕を残せるよう頑張ります」

(筆:松瀬学)

(筆:松瀬学、写真:1~6は松瀬撮影・7枚目以降は渡邊祐子さん撮影)

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