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まっちゃん部長日記@マウスピースは絶対、付けてくれ!
日体大の愛称マヌことラコマイソソ・イマニエル君(2年)は退院した翌日、練習のはじまる前、部員全員にこう、訴えたそうだ。まだ痛みの残る口を開いて。
「マウスピースは絶対、付けてくれ!そうしないと、僕みたいにけがをするぞ」
口元の上部には銀色の矯正器具がのぞく。こう続けた。心に届く。
「マウスピースは大事だぞ。手術後は、食事もなかなかできなくなる。生活もしづらくなる。ラグビーもできなくなる。チームメイトにも迷惑をかけることになる。僕みたいにならないでほしい」
◆試合で頭部、顔面を強打して負傷退場。緊急手術へ。
マヌは5月12日の立正大戦に先発出場した。大学に入って初めてのことだった。「初めてのスタメンでめちゃくちゃ気合が入っていました」。ただ、自分のマウスピース(マウスガード)を合宿所から持ってくるのを忘れていた。迷ったが、そのままマウスピースを付けずにプレーした。
絶好調だった。鋭利するどいラン、判断のいいパス、的確なキック。が、前半10分過ぎ、立正大フォワードにタックルにいき、芝のグラウンドに倒れた。頭部、顔面を強打したように見えた。
スタンドにいたご両親は息子の様子を気遣い、落ち着かないご様子だった。この日は母の日。とくに母親の心中は察してあまりある。
即、担架でグラウンドから運び出され、救急車で近くの病院まで運ばれた。
マヌの述懐。
「救急車の中でぼんやり意識が戻ってきました。けがの瞬間は覚えていません。口の中ががたがたで。痛くて痛くて」
病院で応急処置を受けた後、渡辺清ヘッドトレーナーと一緒に日体大健志台キャンパスそばのラグビー合宿所に戻った。翌日、ラグビー部がいつも世話になっている昭和大学付属藤ヶ丘病院に緊急入院した。迅速、かつ適切な対応をしていただき、全身麻酔を受けて、口腔の緊急手術をしてもらった。
左上前歯の歯槽骨(しそうこつ)骨折と上口唇挫創(ざそう)の全治2カ月と診断された。マヌは3日後、退院した。そして、全部員の前に立ったのだった。
◆マヌ「親に心配かけてしまった」
けがから1週間後、マヌが私の研究室に来てくれた。私は、彼のからだをいたわり、部員にマウスピースの重要さを伝えてくれたことに感謝した。
マヌは恐縮していた。親に心配かけちゃだめじゃないか、と言ったら、親思いの彼は「あの日、母の日だったんですよね」と小声で漏らした。「親不孝ものです、僕は。ほんと、親に心配をかけてしまいました」
◆練習からマウスピースを
コンタクトスポーツのラグビーにおいて、中学生、高校生はマウスピース(マウスガード)が義務化されている。プレー中の衝突や転倒などで歯を折る、口の中を切るといったけが、あごを介した衝撃による脳震とうなどを予防、軽減をしてくれるからである。ひと言で言えば、激しいプレーから、選手たちを守ってくれるからだった。
ほとんどの大学が、試合ではマウスピースを付けるよう指導している。これを契機とし、日体大では、試合はもちろん、フルコンタクトの練習でもマウスピースを付けるよう徹底することになった。
マウスピースはマスクみたいなものだろう。ふだんから使用していないと、試合だけでは息苦しく感じることにもなるだろう。
ラグビーするならマウスピースは絶対、付けるー。これを徹底していこう。
(松瀬学)