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2024.06.19.

まっちゃん部長日記Part5 関東大学春季大会「日体大×成蹊大」

『「おとーさん、いつも、ありがと~」日体大が夏日の父の日にアツい大勝』

 

 学生にとって、父の日は格別である。勝つと、ラグビー部員も父親たちも笑顔になる。関東大学春季交流大会第5戦。上昇気流にのる日体大が6月16日、昨年12月の1部・2部入れ替え戦で激闘を繰り広げた成蹊大に59-7で圧勝し、通算3勝2敗とした。気温30度を超える真夏日の中、アツい、アツいプレーを展開したのだった。

 「おとーさん、いつも、ありがと~」。試合後、陽気な右プロップ、汗だくの中野佑晟(ゆうせい)が大声を発した。4月下旬の青学大戦以来の先発。怪我から復帰し、背番号「3」に戻った。この日は田舎の熊本からご両親がスタンドに駆けつけていた。中野はつづける。

 「今日は、遠方より、おとうさん、おかあさんが(東京に)出てきていて、気合いも入りました。おとーさんにいいところを見せることができました。暑いのは嫌いですが、最初のスクラムで今日は前に出られると分かったので、どんどんいきました」

 中野はスクラムの大黒柱。相手ボールのスクラムにおける『ターンオーバー(攻守逆転)2回』のチーム目標をクリアした。この1カ月、スクラムでは、ヒットスピードを重点的に練習してきた。ポイントは、バックファイブ(ロックとフランカー、ナンバー8)がしっかり結束して前に鋭く出られるかどうか。

 佐藤友重スクラムコーチは「まだまだです」と言いながらも、こう言葉を足した。

 「当たり勝ってはいました。スクラムはヒットで9割方決まりますから。セットアップをちゃんとして、力が漏れないパックをつくって、もっと早くあたっていきたい」

 

 ◆主力4年生不在。ゲーム主将の3年川越「みんなエナルギッシュだった」

 

 試合会場が、本拠の横浜市青葉台・日体大健志台キャンパスのラグビー場だった。太陽が照りつける中、正午、キックオフされた。日体大はといえば、萩原一平主将やロックの岸佑融(ゆうすけ)ら数多くの4年生が教育実習で試合には出なかった。先発メンバーで4年生はフランカーの高橋龍世とCTBの齋藤弘毅のふたりだけだった。

 ゲームキャプテンを務めた3年生CTBの川越大地は「みんなエネルギッシュだった」と振り返った。汗でボールが手に付かなかったのだろう、チームのアタックではハンドリングミスも数多くあったが、全員でボールをつないでいこうとの意図は見えた。

 ゲームテーマが『走り勝つ』だった。チームのトライが、川越のダイナミックなトライを含めて計9個。

 「4年生があまりいないので、若い人たちでいかに走られるか、勢いをつけられるかがポイントでした。やっぱり課題も残ったんですが、元気にエネルギッシュに走り回ることはできたのかな、と思います」

 それにしても、いや~暑かった。スタンドで観ているだけでも汗が噴き出すのに、炎天下の人工芝のグランドで走り回っては。

 「マジ、暑かったです」とこぼし、川越は笑った。

 「自分も途中でバテていたんで、恥ずかしかったですね」

 

◆光る堅固なディフェンス。湯浅HC「チーム全体としての力が上がってきた」

 

 日体大の攻めにリズムをつくったのは、堅いディフェンスがあったからだろう。とくに個々のタックルが向上している。低い姿勢から突き刺さり、足をぐいぐいと運ぶ。いつも辛口の湯浅直孝ヘッドコーチが、「ディフェンスがよくなってきています」と褒めた。

 「タックルがしつこくなってきたし、内側のサポートも来るようになってきました」

 ただ、アタックに関しては、「やろうとしたことがなかなかできませんでした」と反省しきりだ。「今日は暑さで崩れたというか、(攻めのスピード、コミュニケーションが)足りなかった。ボールもかなりスリッピーだったんじゃないかな」

 この大勝スコアに満足かと思いきや、「もっといくつもりでした」と真顔でいう。「ただ(数多くの)4年生がいなかったなかでこれだけできたというのは、チーム全体として力が上がってきた証拠かなと感じています」

 

◆視線の先には秋の強豪校。秋廣監督「ブレイクダウンの二人目が遅い」

 

 秋廣秀一監督も反省を忘れない。

 この数週間、練習ではとくにブレイクダウンに取り組んできたけれど、その成果があまりみられなかったからだ。「ブレイクダウンで完全に勝ち切れていない」と漏らす。

 「二人目が遅いからです。今日のようなブレイクダウンでは、A(1部)の上位校にはかなわない。相手はもっとばんばん(こちらを)弾き飛ばしにきますよ」

 視線の先には、秋の対抗戦グループA(1部)の公式戦がある。打倒!帝京、打倒!明大、打倒!早大、打倒!慶大・・・。もう想像するだけで、ワクワクする。魂が震える。

 

◆選手表彰にこぼれる笑顔、わき上がるチームメイトの拍手

 

 試合後の円陣では、監督表彰として、途中交代出場で奮闘したプロップの豊嶋優希、CTB嘉藤匠悟(かとう・しょうご)が名前を呼ばれ、チームメイトのアツい拍手をもらった。愛称トムことレワ・パエアの破壊力もすさまじかった。タックルしては、立ち上がってすぐに“ブル・ファイト”する。ブル(闘牛)のように猛々しくファイトしたのだった。

 また、川越ゲームキャプテンが特別表彰として、声とプレーでチームを元気づけ、鋭利するどいランで度々、ビッグゲインした3年生のFB大野莉駒(りく)の名前を挙げた。

 このほか、ラインアウトの堅実なスローイングやスクラムで奮闘したフッカー楳原大志、ボールをタイミングよく散らしたSH小川遥斗(はると)、何度もビッグゲインしたCTB齋藤弘毅(こうき)らの動きも光り輝いた。ああ、そうだ。忘れてはいけない。1年生のナンバー8、中川内(なかがわち)優太の思い切りのいいプレーも印象に残った。

 

◆村中OB会長「(選手が)自信を持ってきた」

 

 この日は、試合前に日体大OB会の全国幹事会が大学で行われた。だから、試合を多くの日体大OBがスタンドから観戦した。多くが黄金時代の勇者ばかりである。九州の福岡からは、筆者が高校時代からお世話になっていたOB副会長の服部喜代次さんも来られていた。

 試合後の円陣で、OB会長の村中宏行会長が「ナイスゲームでした」と声をかけた。

 円陣が解けたあと、村中会長に後輩たちの試合の感想を聞いてみた。ふと表情が和む。言葉に滋味がにじんだ。

 「フォワードもバックスもかなりまとまってきていますね。やっぱり、ディフェンスがいい。よく前に出ています。みんな、自信を持ってきたんじゃないですか」

 そうなのだ。秋に向けて。部員たちがこの小さな自信を大きくできるかどうか。それは、これからの日々の鍛錬にかかっている。

(松瀬 学)

①〜⑥は渡邊祐子さん撮影、⑦〜⑪は大野清美さん撮影

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