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2024.08.24.

まっちゃん部長日記part7 @二度とこない青春の夏合宿

 「ファイト! 青春」である。長野・菅平高原の朝ははやい。午前5時起床。パソコンでメールをチェックしたあと、午前6時からのラグビー部の練習に顔を出し、あえて学生たちに元気よくあいさつをする。直後、ひとりでダボスの丘に駆けて行く。強烈な日差し、心地よい高原の涼風、小鳥のさえずり。ダボスの丘のてっぺんに到着すれば、日体大の練習グラウンド(第一館ホテルG)の方角に向かって大声を出す。

 「がんばれ! ニッタイ」

 

 ◆レフェリーの笛付きで天理大と壮絶なスクラム・セッション

 

 23日の金曜日。午前9時半から、強力FWの天理大と合同練習『スクラム・セッション』を行なった。ありがたいことに、関東協会の森田太郎レフェリーが笛を吹いてくれた。「せ~の」との掛け声のあと、森田レフェリーの鋭い声が響く。「クラウチ」(身をかがめ)、「バインド」(相手と手を組み合う)、「セット」(組み込む)。FW8人の呼吸を合わせ、ガツンと組み込んでいく。

 日体大のフロントロー陣は最初が左からプロップ築城峻汰(3年)、フッカー萩原一平主将(4年)、プロップ中野佑晟(3年)。ロックが岸佑融(4年)、テビタ(3年)。フランカーは大竹智也(4年)、楳原大志(3年)、そしてナンバー8が岡部義大(2年)。

 このほか、フロントローでは藤田幹太(4年)吉田伊吹(3年)由地蓮(3年)新垣敬史(4年)中林勇希(1年)ら、メンバーをどんどん替えながら、1時間余、両フォワードの固まりが対峙した。意地とプライドの激突。

「天理、いくぞ!」との掛け声のあと、天理大フランカーの大声が響く。「エクスプロージョン」と。Explosion、爆発とは、なんと物騒な。その言葉通り、ヒットスピードは爆発的に鋭く、重くてインパクトがあった。何といっても、タイトなバックファイブ(両ロックと両フランカー、ナンバー8)の押し込みがすさまじかった。

 日体大FWは2、3本に1本は、低い姿勢からぐっとこらえて踏ん張るのだが、その他はズルズルと押し込まれた。右プロップ中野の右耳がすれて、鮮血がにじみ出す。痛そうで、痛そうで。

 

 ◆佐藤友重コーチ「収穫は大きい」「まだまだ伸びしろがある」

 

 「ニッタイ、ヨンジュウゴド(45度)」との日体大の佐藤友重スクラムコーチの声がかかる。スクラムの理論、指導力、情熱でいったら天下一品だ。

 「ヒット!」

 「当たり勝て」

 「押せるぞ!」

 「浮くな、浮くな」

 「いいぞ、いいぞ」

 「最後、あきらめたらアカン」

 

 日体大にとっては、よきレッスンとなった。

 「収穫は大きいですね」と、友重コーチは言った。

 「強い相手と組み合ったことで、だいぶ、意識は上がってきたようです。バックファイブから早く仕掛けよう、スクラムユニット全体のヒットスピードを上げようと、7月、8月はやってきました。まだまだ(バインドは)ルーズですけれど、いいプラットフォームができれば相手を押し込めますね。フォワードのマインドが“スクラムはイケる”と変わってきています。それが大きいです」

 ひと呼吸おき、笑顔をつくった。

 「まだまだ伸びしろがありますよ」

 

 ◆フッカー萩原主将「スクラムが(いい形に)変わってきた」

 

 フッカーの萩原主将はこうだ。

 「今日の収穫は、プレーの技術うんぬんより、マインドのところです。相手に比べたら、スクラムの時、うちはちょっと静かかなと感じました。天理大さんは、関西ということもあって、プライドや激しさを持っていました。それに刺激されて、僕たちも、ちょっとずつですけれど、(いい形に)変わってきました」

 

 ◆萩原主将「ラインアウトは、ぎりぎりのところで対抗しないと」

 

 スクラムバトルのあとは、ラインアウトからのモールの攻防が行われた。これは天理大が圧倒的に強かった。捕球した選手が着地した時のFWのインパクト。モールが形成された時点で、日体大は2歩、3歩と押されるものだから、そのまま押し込まれてしまう展開がつづいた。日体大は天理大に比べて、ヒットで負け、足腰も高く。レッグドライブも弱い。これじゃ、劣勢に回るのは致し方ない。

 要は、ぎりぎりの押し込むタイミング、8人の固まりをどうつくり、どう押し崩すのか、であろう。リフターのところにどうくさびを打ち込むのか。天理大の仕掛けが早すぎるようにも映ったが、そこはレフェリーの判断しだいである。

 萩原主将は、「(天理大の)ラインアウトはうまいなと感じました。ペナルティーぎりぎりのところを攻めてくる。うちもぎりぎりのところで対抗しないとやられてしまいます」

 

 FW8人の意思統一

 

 練習が終わる。主将の萩原と副将の岸がふたりで森田レフェリーに質問にいった。レフェリングのポイントを聞く。いいことだ。ラガーたるもの、競技規則に対するレスペクトを持たなければならない。

 森田レフェリーは貴重なアドバイスを出してくれた。日体大がいいスクラムを組む時は、クラウチ、バインド、セットのコールで8人がしっかり止まり切っているそうだ。とくにバインドのあと。ワンコール、ワンアクションでしっかり止まる。逆に悪い時は、だれかひとりが緩い状態で動いている。止まり切れない。だから最初のヒットで後手を踏む。

 つまるところ、FW8人の意思統一か。

 

 ◆雷の音が聞こえる中、帝塚山大に圧勝

 

 24日の土曜日。

 午後零時45分から、日体大Cと帝塚山大との試合が行われた。落雷予報のため、予定を15分早めてのキックオフだった。

 遠くから雷の音がゴロゴロと聞こえてくる中、日体大は縦横に走り回って、トライを量産した。スクラムハーフ小川遥斗(3年)のスピード豊かな球さばき、センター石田一休(2年)ウイング重見竜之介(3年)の鋭利するどいラン…。それにしても、プロップ有田睦(2年)のフィールドプレーはうまい。

 試合後、予報通り、激しい雨が降り出した。学生たちの火照ったからだを静めるかのように。

 

 ◆中林、19歳の誕生プレゼントはソフトクリーム。

 

 閑話休題。

 8月24日は、「社長」こと、1年生のプロップ中林勇希の19歳の誕生日だった。夕食の際、部員全員で「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」を合唱した。中林は緊張の面持ちでスピーチした。やんやの喝さい。

 「19歳の誕生日です。これからも、謙虚にがんばります」

 夕食後、ホテルそばの飲食街を歩いていたら、ばったり中林にあった。誕生日プレゼントに何でもおごるよ、と言えば、中林が買ったのはソフトクリームだった。

 

 

 ◆海原父「今日という青春の日は二度と戻ってこないぞ!」

 

 夏合宿も残り3日となった。疲労が蓄積され、あちらこちらが筋肉痛で痛み、足腰もガタガタだろう。少なくない選手が打撲や脱臼、擦り傷など負傷を負っている。でも、秋のシーズンに向け、鍛錬に励んでいるのである。

 

 日体大のグラウンドの脇には土手があり、連日、数多くの保護者の方が応援に駆けつけてくださっている。福岡からは、肩を痛めている海原一郎(4年)の父の姿もあった。練習後、海原が土手を駆け上り、父のところに行った。

 父はこう、海原に檄を飛ばしたのだった。

 「今日という青春の日は二度と戻ってこないぞ!」

(松瀬学)

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