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2024.10.29.

まっちゃん部長日記part13@ 「試練はつづく。日体大、2T奪取も立大に敗れて5連敗」

 1部復帰した日本体育大学にとって厳しい試練がつづく。相手に挑みかかる気概はノーサイドまで衰えない。ひたむきにタックルはする。走る。当たる。でも…。2トライを奪取しながらも、日体大は立教大に17-45で敗れた。ああ、これで5連敗となった。

 秋廣秀一監督は途方に暮れる。

 「最初の20分はよかったんですけど、途中からはやはり、コンタクト負けで反則やミスが増えてきて…。もちろん“2部と1部は違うんだぞ”ということで練習はやってきました。ただ、接点でどうしても当たり負けしてしまうのです」

 ラグビーはやはり、フォワードである。みんな、からだを張っている。見ていて、涙がでそうになるほど。でも、でも、悔しいじゃないの。「がんばれ」としか言えない自分が情けなくなるのだった。

 

 ◆膨らむ初勝利への期待感

 

 衆議院選挙のあった10月27日の日曜日だった。

 試合会場の第二陸上競技場がある栃木県総合運動公園では、メインスタジアムではサッカーJ2の栃木SC対清水戦などもあり、ざっと2万人のスポーツファンが詰めかけた。JR宇都宮駅でばったり、岩手県釜石市から日体大の応援に駆け付けた女子マネジャーのご両親と出会い、タクシーで第二陸上競技場までご一緒した。

 タクシーの中で旧知の父親はこう、学生にエールを送った。「勝ち負けはともかく、選手のみなさんにはからだを張ってほしい。日体大の意地を見せてほしい」と。

 試合会場の入り口では多くの保護者にも再会した。会場に入れば、スタンドにはフランカーの家登正旺やナンバー8の岡部義大の出身高校(國學院栃木高)のラグビー部の恩師、吉岡肇先生もいらっしゃった。

 ありがたいことである。グラウンドからスタンドをみれば、日体大カラーの紺色&水色の応援Tシャツを着た保護者の方々、ノンメンバーのラグビー部員たちの姿も目に入った。

後方には、でっかい秋空が広がっている。隣の遊園地のジェットコースターからは悲鳴のような叫び声が流れてくる。そんな中、どうしたって、「今日は勝ってくれる」との期待感が膨らむのだった。

 

 ◆前半の序盤20分間は日体大ペース。原田が先制トライ「一番にトライをとると決めていた」

 

 前日の土曜日に取材した横浜・日産スタジアムの日本代表対ニュージーランド代表のテストマッチのような展開だった。最初の20分。日体大は日本代表のような、絶好な立ち上がりを見せてくれた。

 ゴールライン前に攻め込まれるも、“炎のタックラー”、フランカー大竹智也が地を這う猛タックルでピンチをしのいだ。前半5分。ラインアウトからラインに展開。ラックからSH伏見永城が絶妙のハイパントキックを蹴り上げた。このボールを立教FBがからだの前にはじいた。

 日体大が一気呵成に攻める。左オープンに回し、CTB勝目龍馬がゲインしてラックをつくる。すかさず、SH伏見が順目の左のブラインドサイドに回す。FWがどどっとフォローに走る。今季初先発のロックの「トム」ことパエア・レワが前に出て、うまくプロップ吉田伊吹、そして俊足WTBの原田来紀につないだ。

 原田が鋭利するどいランで駆け抜け、ステップを内へ切って、相手タックラーを外し、そのまま左中間に飛び込んだ。先制トライ。SO五味侑也のゴールも決まって、7点を先取した。今季初めての先制である。

 原田は試合後、笑顔で言った。

 「自分はウイングというポジションなので、今日の試合では一番にトライをとると決めていました。それで、トライをとれて、チームに流れをつくれてよかったです」

 トライは?

 「はい、得意です。トライは、気持ちいいです」

 

 ◆五味のPGも決まって10点を先取

 

 この後、前半15分、この日のモスト・インプレッシブ・プレーヤー(MIP)に選ばれたSO五味がペナルティゴールを蹴り込み、10-0とリードをひろげた。

 前半20分のウォーターブレイクで流れが変わる。

 スクラムが押され始め、ラインアウトではミスが相次いだ。セットプレーで劣勢に立つと、どうしてもディフェンスが難しくなる。スクラムの押しやラインアウトからのドライビングモールなどで3トライをとられ、10-21と逆転を許した。

 ベンチから控え部員の必死な大声が飛ぶ。

 「生きるか、死ぬかだぞ~」

 

 ◆追い上げムードもシンビンでしぼむ

 

 後半、スタンドからの大声援が秋風にのる。

 「ニッタイ、ニッタイ」

 立大に1トライを加えられた。でも、戦う姿勢は変わらない。まだ、まだ。後半の序盤、またもゴールライン前のピンチでフランカー大竹が猛タックルを決め、右こぶしを突き上げた。いいぞ、いいぞ。その気迫がチームを活気づける。

 「コクトチコンビ」の家登、岡部、そしてロックの岸佑融がラインアウトで活躍する。ブレイクダウンでもからだを張る。タックル、ジャッカル、突進。

 後半7分。日体大はラインアウトからのモールを押し込み、フッカーの萩原一平主将がサイドに持ち出す。FWが立て続けにサイドを突いて前に出る。ラックから一度、右オープンに振り、そのラックから今度は左へ。トムがボールをもらうと、パワフルな突進で相手タックラーをひとり、弾き飛ばした。左隅に飛び込んだ。トライ! またもSO五味が難しい位置からのゴールを蹴り込み、17-26と追い上げた。

 でも、ここでも、敵陣ゴールライン目前のラインアウトのミスが響いて、逆襲に移れない。逆に相手WTBにトライを奪われ、後半27分、SO五味がハイタックルの危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場処分)を食らった。

 一人少ないディフェンスラインを突かれ、後半30分、ノーマークの相手WTBに難なく、右隅に飛び込まれた。万事休す。FWの足も止まり、さらに1トライを追加された。

 

 ◆湯浅HC「下を向いていてもしょうがない」

 

 この日もウォーターボーイ役を務めた湯浅直孝コーチ(HC)は険しい顔だった。「最初は敵陣に入れる時間が多かったんで自分たちのペースに持っていけた」と述懐し、「でも」と言葉をつづけた。

 「ミスとか、相手のビッグゲインで(日体大の)自陣に戻ってプレーをしてしまった。反則を含めて、そういったところが、ニッタイが乗り切れなかった理由かなと思います」

 ただ、悲観する必要はない。

 今週、練習でこだわってきたディフェンスのしつこさは形になりつつある。時にタックルのバインドが外れるケースもあった。

 「タックルを決めるところの精度はもう少しかなと思います。あとふたつ(青学大と慶大)、もうやるしかないです。下を向いていてもしょうがない」

 

 ◆萩原主将「FWもバックスも切り替えていく」

 

 足の痛みを押して奮闘している萩原主将はこうだ。

 「最初は自分たちが流れに乗っていたんですけど、多少失速したところで、流れが相手にいっちゃったと勘違いして乗り切れなかった。ミスは仕方ないと思うので、FWもバックスも切り替えないといけなかった。そこは修正していきたい」

 タックルで大暴れした大竹は、前を向く。

 「途中から、自分たちのミスから首を絞めて、あっちのペースになってしまった。最後は防ぎ切れなかった。もう、やるしかないです」

 秋廣監督はこうだ。

 「あと2試合、何とか勝利をほしい」

 

 ◆悔いは残すな! 生きるか、死ぬか!

 

 戦術面など課題はいろいろあるだろうけれど、まずはチーム内のミーティングで戦術の徹底や意思統一を図れるかどうかだろう。あきらめない。どうしても。最後まで。

 ま、部長の仕事は部員のメンタル面だろう。とくにノンメンバーも必死にならないと、チーム一丸は難しい。ノンメンバーよ、とくに4年生よ、悔いは残さないでほしい。一回ぽっきりの青春だ。ごぼごぼと熱血をたぎらせよ。

 衆院選は山が動いた。自民党の石が破れた。日体大もまた、流れを変える。その一直線の闘争心が、チームの勝敗を動かすのだ。

 いざ、生きるか、死ぬか!

(筆:松瀬学、写真:岸健司氏)

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