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まっちゃん部長日記②「GW。日体大、チーム一丸で日大に快勝」
GWである。ゴールデン・ウィークの略ではない。日本体育大学にとっては、ゴールデン・ウィン(勝利)の略ときたものだ。5月4日。関東大学ラグビー春季交流大会にて、日体大はチーム一丸で日大に46-24と快勝した。相手に挑みかかる気概にあふれていた。
「楽しかったです」。弾丸タックルを炸裂させたフランカー江頭京介は試合後、満面の笑顔だった。「1週間、チームでやってきたことが試合でできました。盛り上がりました」
言葉通り、試合中、何度も日体大選手のガッツポーズが飛び出した。ハイタッチも。スクラムを押し込んで、スティール(旧ジャッカル=相手ボールの奪取)を決めて、そしてトライを決めて。
練習で特にやってきたこととは、スクラム、ラインアウト、ブレイクダウン、ディフェンスのシステム…。いつも辛口の湯浅直孝ヘッドコーチも言葉に充実感を漂わせる。
「エリアをとって、セットプレーで相手を崩して、流れをつかむことができました。後半もよく、走り切れました。前半、しのいだのが大きかったですね」
◆楳原副将「ずっと日大を意識して練習してきました」
京王線の若葉台駅から登り坂をえっちらおっちら歩いて約20分の日本大学稲城グラウンド。気温が26度。陽射しもきつく、チームブレザーを着ているので汗が噴き出してくる。サッカー場の奥に、キレイな人工芝のラグビー場があった。
正午キックオフ。初戦の成蹊大戦と同様、日体大はスクラム、ラインアウトのセットプレーで優位に立った。実は一カ月前の日大との合同練習では、スクラムやブレイクダウンでやられていた。副主将のフッカー、楳原大志は言った。
「ずっと日大を意識して練習してきました。(スクラムは)一歩も引くことなく、試合で仕掛けられました。強気でいきました」
でも、と言葉を継いだ。
「僕はまだまだ、です。からだを大きくして、もっとがんばります。ヨッシャ―!」
◆秋廣監督「勝因はスクラム、課題はディフェンス」
あえて最大の勝因を挙げれば、やはりスクラムか。9本組んだスクラムのうち、3本でコラプシング(故意に崩す行為)の反則をもぎとった。スクラムで優位に立てば、チームはおのずと勢いづく。
秋廣秀一監督は開口一番、「スクラムだったと思います、勝因は」と漏らした。
「前の試合と一緒です。スクラムで勝てば、結果がついてきます。セットプレーではチームの成長を感じています」
もちろん、課題も見えた。特に失点の多さだ。
「課題はディフェンスでした。ラインがでこぼこになってしまって。連係がうまくとれていませんでした。そこは修正しないといけません」
◆木下スクラムコーチ「だいぶ選手が成長してきました」
スクラムに関して言えば、新しいスクラム担当の木下剛コーチのもと、新しいスクラムマシンを使って、練習で多くの本数を組み込んでいる。
木下コーチは「一カ月間、だいぶ選手が成長してきました」と言った。
「みんなが負けずに、自分に向き合ってやってくれているのかなと思います。3番(右プロップ)のために残りフォワード7人が、フロントローのためにバックファイブ(両ロック、両フランカー、ナンバー8)がどうするかという相互関係が少しずつできてきているのかなと感じます」
スクラムの要諦は8人結束である。互いの信頼関係があるかどうか、相互関係が密接かどうか、それが成長を促すことになる。
この日の収穫は、公式戦初先発した右プロップの2年生、佐々木太陽のがんばりだろう。180センチ、107キロ。秋田中央高出身。「ナイス、スクラム」と声を掛ければ、「思ったよりいけました」と太陽のごとく顔をほころばせた。
名前の由来は。
「周りを太陽のように明るく照らす男になってほしい、という親の願いが込められています」
ちなみに高校時代のメールアドレスが「asaripasta@…」だった。今は変わっているが、純情なプロップである。「あさりパスタが好きなの?」と聞けば、即答だった。
「はい、大好きです」
◆築城「スクラム持久力がアップした」
FWリーダーの左プロップ、4年生の築城峻汰は「スクラム持久力」という言葉を使った。「今日、明確に相手と違うと思ったのは、フィールドで走ったあとのスクラムの強さでした。後半、相手はばてていたんですけど、こちらはフィットネスをした後のスクラム練習などを繰り返してきたので、スクラム持久力がアップしていたのかなと思います。固まって前に押すベクトルも合ってきています」
けがから復帰した右プロップの4年生、吉田伊吹は後半に交代出場した。あいさつ代わりのスティールでも気を吐いた。
「ブレイクダウンのところは意識しようとしていたので。スクラムはまあ、ぼちぼちですね。スクラムは押せたけれど、コール(掛け声)がかからなくて…」
◆SO五味が好キック、CTBマヌも絶妙なキックパス
おっと、スクラムの事ばかりを書けば、バックス陣に怒られる。
SO五味侑也、センターに入った「マヌ」ことラコマイソソイマニエルのエリア取りのキックは効果的だった。立ち上がり、SO五味のナイスキック、ナンバー8中川内優太のナイスタックル、そして副主将のセンター川越大地のスティールが決まる。
相手ボールのスクラムに当たり勝ってコラプシングの反則をもぎ取り、タッチに蹴り出して、相手ゴール前のラインアウト。前半7分。ドライビングモールでごりごり押し込んで、最後はフッカー楳原が右隅に押さえた。先制トライ。
風下もあって、日大に2トライを許し、逆転された。前半30分。相手がシンビンで1人減った。闘志の塊、マヌが肩を痛めたが、プレーを続行する。前半38分、そのマヌが左足で左ライン際に絶妙のキックパス。これを途中交代で入っていた185センチの古賀剛志が長いリーチを生かして好捕し、左隅に飛び込んだ。
直後、PKで敵陣ゴール前に攻め込んで、またもラインアウトからのドライビングモールでロック逢坂侑大が左隅に押さえた。17-19で折り返した。
◆主将の大野が迫力の躍動トライ「周りのサポートのおかげ」
日体大は後半、風上に回った。3分。ラインアウトからの「即興」のサインプレーが決まった。スローワーの楳原が一番前に入ったフランカー岡部義大に放り、岡部がスピードよく抜け出して、内に付いたSH原田来紀にパス、そのままインゴールに駆け込んだ。22-19と逆転した。
日体大は後半、走り勝った。後半11分、ナンバー8中川内がラックサイドを突いてトライを重ね、その6分後には、FB大野莉駒がキャプテンの意地を見せて、躍動感ある力強いランで数人のタックラーを振りちぎり、ど真ん中に走り込んだ。
大野はその後、左肩を痛め、試合後は左腕を白い三角巾で吊っていた。
「大丈夫?」と心配すれば、大野主将は「まず、結果が勝ったんで、よかったです」と顔をゆがめた。
「フォワードがスクラムとラインアウトで勝ってくれたので、この結果となりました。バックスはまだまだ。ワンオンワンのところ、ディフェンスがダメでした。トライですか。誰かが、僕のサポートについてくれて、一緒に押してくれたからです」
後半に交代出場のCTB鈴木一平は猛タックルで輝いた。
◆岡部「下級生を引っ張りながら、失点を少なくしていきたい」
この日のチームMVPは岡部である。
80分間、攻守にわたり走り回った。ワークレートが相変わらず高い。ピンチで戻ったり、ボールに絡んだり、チームを鼓舞したり。
岡部は「今日の試合は僕らが走り勝てたなって思います」と言った。
「ほんと、前半は結構苦しかったんですけど、後半になって、相手の足が止まったところで何本もトライがとれました。ただ、ちょっと失点が多かったところは反省です。今後、(教育実習で)4年生が抜けた時、どうなるのか。下級生を引っ張りながら、失点を少なくしていきたいですね」
◆ロック石塚「合同練習で日大にやられて悔しかった」
後半22分、またもラインアウトからのドライビングモールで、最後は途中交代のフッカー三浦海がボールを押さえた。ゴールも決まって、43-13とリードした。
この日、結局、ドライビングモールから4本のトライを奪った。一目瞭然、天然パーマのロック石塚翔真は「ことしの日体フォワードはモールとスクラムを武器にしていこうと考えています」と語気を強めた。
「1カ月前の合同練習で日大にやられて、悔しかったんで…。きょうはモールで必ず、3本のトライをとろうと言っていました。それが4本。大満足です」
ひと呼吸ついて、こう続けた。
「目標を持って練習することがいかに大事かがわかる1カ月間でした」
◆三浦海の左手首には「鉄」の文字。中川内「不撓不屈で」
ところで、三浦の左手首の白いテープには黒マジックで「鉄」と書かれている。出身校の長崎北陽台高のチームスローガン、『鉄になれ』の「鉄」である。
ああ鉄のからだ、鉄のメンタル。
なるほど、やはりラグビーはハートである。
そういえば、活躍したナンバー8中川内とフランカー江頭は前日、一緒に母校・佐賀工高のサニックスワールドラグビーユース交流大会での勝利をyoutubeライブで視聴していたそうだ。中川内は述懐する。
「久々にめちゃくちゃ熱くなりました。あしたは、“高校時代を思い出していこうよ”って。“ほんと、かまそうや”みたいな」
言葉を足す。
「不撓不屈でよかったです」
この四字熟語は佐賀工のスローガンである。不撓不屈とは、どんな困難にもめげずに、挫折せずに立ち向かい、諦めずに困難を乗り越えること。つまり、くじけない精神力、粘り強さ、そして諦めない心を持つことである。
◆タフ・チョイスでいこうぜ!
さて、日体大の今季のチームスローガンは『タフ・チョイス』である。
どんな時でもタフな道を選択して、一人ひとりが、チームが前に進んでいこう、との意味である。どこか不撓不屈と似てはいまいか。
大学選手権出場をめざし、日体大がひとつになろうとしている。
道は険しくても、さあ、タフ・チョイスでいこうぜ。
(筆:松瀬学。写真提供は①~⑨は善場教喜さん、他はチームスタッフ)
3年 FL 岡部義大 4年 FL 大野莉駒主将 4年 HO 楳原大志 2年 NO.8 中川内優太 4年 CTB 川越大地 3年 HO 三浦海